「今回ユエさんには外れて戴きます。」
光一くんが、淡々と言ってのけた。皆何か言いたげだったけど、どう抗議していいのかわからないらしい。
「ああ、能力による差別とかじゃないんだ…」
やなくが申し訳程度にフォローをいれる。
「ワクチンを作るにはマザー級の『コア』と『鍵』の生体情報が必要なんだな」
「それに奴らは『鍵』の破壊を狙って来ます。とてもじゃないけど…。」
「そうそう、だから参加させる訳にはいかないんだ。」
相変わらず小芝居を続ける二人。
「……て下さい…」
『えっ？』
「もうそんなお芝居はやめて下さい！私も戦います！友達を見捨てるなんて私には、出来ないっ！！」
『・・・・・・』
口を閉ざす二人。やがて光一くんが口を開く。
「君は『英雄』となることを選んだ。そう思って良いんだね？」
「・・・私に出来ることならやりたい。見て見ぬ振りなんて出来ないから。」
「わかった。君がそう言うなら僕はもう止めはしない。みこと、作戦にユエさんを組み込んでくれ。」
「りょ〜か〜い！この華麗にして（中略）大天才倶利伽羅みこと様が完璧な作戦を立て直しちゃうよ〜！」
「アンタの作戦なんてアテになんの〜？」
「ははは。相変わらず手厳しいな。そんなんじゃ男なんか近寄りそうにないよな〜・・・ぐはっ！」
「あははは。滝さんっていっつも地雷踏みますよね〜。」
心なしか皆嬉しそう。（皆の為なら犠牲になったって構わない。世界を救うのなんてついでで良い）今なら心からそう思える。
「はい、ちゅうも〜く！早速新しい作戦の発表をしま〜す！」
『早っ！』
光一くん以外の全員がつっこむ。
「ふっふ〜ん！俺様に不可能はな〜い！」
大袈裟なポーズをとりながら大きく胸を張るみことくん。が、
「寝言言ってないでさっさと説明しなさいよ。」
すぐさまミナのつっこみ（＋鉄拳）を受ける。
「うぅ・・・天才虐待反対・・・。」
蹲って泣き出すみことくん。
「もう一発いっとく？」
「・・・説明させて頂きます。」
何だか哀れになってきた。
「え〜・・・今回は定番の潜入作戦。皆には入信してもらうよ。」

「なぁ、いくらなんでもこれは明らかに不自然じゃないか？」
教団ビルに向かう一行。その格好は黒のスーツにスラックス、おまけにサングラスというMIBよろしくなもの。
「そう？おかしなトコなど１ミクロンも見当たらないけど？」
「そりゃアンタにはね。どう見たって怪しさMAXじゃないの！」
すると、一人だけまともな普通格好をしてる光一くんが、
「うん、明らかにおかしいよね。ただ、一つ言えるのは“あえてすんなよ、そんな格好”ってことかな。」
さもおかしそうにつっこんだ。