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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 9

「静かなる冷気よ、縛れ」
一足先に早苗の魔術が発動した。大蛇の身体が氷に浸食され、動きを封じる。動けなくなった大蛇に高志郎と彩華が迫る。
「蒼閃破!」
「ヴァルログ!」
蒼い斬撃が大蛇を切り裂き、炎の鞭が焼いた。
大音声を立てて倒れる大蛇。その身体はゆっくり崩れていく。
「やったか」
「強かったわね。あたし独りじゃ勝てなかった」
「……そうね」
「ギ……く……」
大蛇が最後の力で身を捩った。うわ言のように何かを言っている。
「ふ……封印……クサナギの……封、いん……」
そう言葉を残し、大蛇は消滅した。
「クサナギの封印?」
心当たりの無い言葉を聞いて彩華は眉間に皺を寄せる。高志郎と早苗に振り返ったが、2人も首を横に振った。


その頃、真は街を歩いていた。高志郎たちに夜は出歩くなと言われたが、真っ直ぐ家に帰る気にはなれなかった。
悔しい、と思った。真は彩華の役に立ちたかった、だが拒否された、力が無かったから。
(……帰ろう)
独りで歩いても楽しいはずが無く、自宅に足を向ける。
しばらく歩いて外人墓地の辺りに差し掛かったとき、真は奇妙な物音を聞いた。
(何の音だろう?)
ここで引き返せばよかったが、興味と好奇心が『逃げる』という選択肢を奪ってしまった。
余程耳が良く場数を相当踏んだ者か、多少気の弱い人間ならば別だが、大抵の人間は『確認してみたい』という欲求にかられる。真も例外ではなかった。
(行ってみよう)
真の足は外人墓地へ向かっていた。
街灯の明かりを頼りに墓の間を音のする方へ歩く。近づくにつれ、それは土や砂を掘り返す音だと言う事に気付いた。
(まさか……墓荒し?)
外人墓地とはいえ今の時代墓を掘り返す墓泥棒は珍しい。
真は高まる好奇心に突き動かされ、墓石に隠れながらさらに近づいていく。そして適当な所で顔を出した。
誰かが、墓の土を掘り返している。暗くてよく見えなかったがシルエットは2メートルを超える大柄な男のものだ。男はひたすらスコップを動かして土を掘っている。
しばらくして真は男の異常さに気付いた。
真が通り掛かる前からもう随分長い間土を掘り返しているのに息切れ一つ起こしていないのだ。驚異的なスタミナ、と言ってしまえばそれまでだが、常識的に考えるとおかしすぎる。
急に怖くなった真はこの場から離れようとする。だがそのとき靴の下で砂利が大きな音を立てた。
スコップの音が止まる。
慌てて振り向くと、男が真を見ていた。
「う、うわぁぁぁ!」
真の意思とは関係なく、喉が叫び声を上げ、足が動いて走り出した。本能がアレは拙い、殺される、逃げろと告げている。

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