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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 8

 
 
夜、高志郎は彩華と早苗と共に市内南部の工業地帯に来た。
「この先の廃工場に……なにか出るって噂がある」
早苗の案内で周囲の中小工場よりも一際大きい、大きな廃工場についた。建物に入った途端、嫌な予感が背中を走る。
「確実に何かいる感じだな」
「ええ。少し可哀想だったけど、結果的にあの子達を置いて来て良かったわ」
彩華の言うあの子たちとは真と結衣の事だ。
2人は付いて来ると言って聞かなかったが、最終的に早苗に黙らされた。その時のセリフはこうだ。
「私が協力を要請したのは高志郎だけ、貴方たちには関係ありません。来ても足手纏いになられてはかえって迷惑です」
かなり厳しい言い方で、2人を黙らせるどころか落ち込ませた。
だが彩華の言うように結果的には良かった。ここは廃ビルより遥かに危険だからだ。
高志郎たちは工場の中枢あたりまで進入した。多くの機械に囲まれたあたりで足を止める。
「なにかいる……」
「後ろよ!」
彩華の叫びとほぼ同時に、3人はその場から跳び退いて振り向いた。
「シャアァァァァ!」
後ろにいたのは、見上げるほど巨大な大蛇の化け物だった。
全長が軽く30メートルはある。先日見た大蛇が可愛く見えるくらいだった。
その大蛇が大口を開けて突っ込んでくる。
高志郎たちは散開し、思い思いの方向に躱した。機械の間を走り、それぞれ武器を取り出す。
「っは!」
高志郎は機械を踏み台にして大蛇の真上に跳んだ。大蛇が真上の高志郎に飛び掛ろうと口を開けて沈み込む。その首を彩華の鞭が絡め取った。動きの止まった大蛇の眉間に短剣が迫る。
だが高志郎は突如空中で何かに打たれ弾き飛ばされた。空中姿勢を建て直し機械の上に着地する。だが同時に腹部の鈍い痛みで膝が落ちた。
「尻尾に注意なさい」
早苗の声がどこからか注意を促す。
鞭を絡めた彩華は大蛇と力比べになった。彼女は見た目に似合わず力があるようで、巨大な大蛇相手に互角に引き合っている。力が拮抗し両者の動きは静止状態だ。
「炸裂する焔……」
大蛇から遠く離れた機械の上に早苗が居た。彼女は目を閉じ、短剣を構えている。
「飛翔せよ」
言葉が終わると同時に彼女の短剣が紫の光を帯びた。虚空に火の玉が現れ、大蛇に向かって飛ぶ。魔術と呼ばれる鬼児の異能だ。
大蛇の左目に着弾した火球は腹に響く轟音を立てて炸裂した。
大蛇は彩華の鞭に縛られたまま悲鳴を上げた。
「はぁぁ!」
彩華は柔道の背負い投げの要領で、鞭を引く。力の均衡が崩れ、大蛇は引き倒された。
そこを再び跳んだ高志郎が真上から襲いかかり、右目に短剣を突き刺した。
「オノレ……オノレェェ!」
悲鳴を上げながらのた打ち回る大蛇。
それを好機と見た高志郎は彩華と顔を見合わせた。彩華は無言で頷く。二人は同時に駆け出した。
高志郎の短剣が蒼い燐光を帯び、彩華の鞭が紅蓮に燃え上がる。

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