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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 6

 
 
おかしな夢を見た。
誰かが自分に縋って泣いている夢だった。
身体が動かず、声もほとんど出ない。薄れ行く視界の中、最後に見たものは、涙に濡れた少女の顔と、彼女の背にある紅蓮の翼だった。


「夢、か……」
自室のベッドの上で高志郎は目を覚ました。
しばしの間、不思議な夢について逡巡する。やがて、枕元の目覚ましが音を立てた。
ベッドから起き上がり、身支度を整えてダイニングに下りる。そしてそこで固まった。
食卓に見慣れない人物が居る。
「あらあら高志郎。なにボーっとしてるの橘さんはもう席についてるわよ」
見慣れない人物、それは昨夜高志郎がここに運び込んだ彩華だった。
気まずさを感じながら自分の席、彩華の向かい側に座る。あちらも気まずいのか目を合わしては来なかった。
無言のまま、朝食を摂る。テレビからは昨夜から今朝にかけて草薙市で起こった事件のニュースが流れていた。
朝食を終え、高志郎は彩華と家を出た。ちなみに彩華のブレザーとブラウスは昨夜の戦闘で破れてしまったため、今彼女は籐子に借りた私服姿である。
籐子は少しおばさん臭いけどと言っていたが、彩華はもとが良いので大人びてとても魅力的に見えた。
しばらく無言で歩いた後、急に彩華が足を止めた。
「ごめんなさい」
「は……?」
いきなり謝られて高志郎は、間抜けな反応をする。彩華は構わず続けた。
「あたしは、あんたを巻き込んでしまったわ」
「いや、いいんだ」
彩華の言わんとしている事がわかって、高志郎はそう答えた。
「でも、あそこにいた二人は恐がっていたでしょう?」
口を噤む。図星だったからだ。
彩華の言うとおり、真と結衣は高志郎と彩華を恐がっていた。
「下手したらあんた……」
「やめてくれ」
高志郎はそれ以上先が聞きたくなくて、強引に遮った。
彩華の言いたい事はわかる。真と結衣に昨夜のことと自分たちのこと全てを話さなくてはならない。だが全てを話せば2人は離れていってしまうかもしれない。高志郎はそれが怖かった。だから彩華は巻き込んでしまったことを謝った。
「ごめんなさい……」
「……いいさ。さあ、早く行こう」
学園の敷地に入った2人は2年生の校舎に向かった。自由を重んじる校風のため校内は土足、今朝の彩華のような私服登校も許されている。
「まさか同じ教室に同類が居るとはな」
廊下を歩きながら高志郎は呟いた。同類とは悪鬼のような人外と戦う異能者・鬼児のことだ、高志郎と肩を並べて戦えた彩華ももちろん鬼児だ。
「あたしも驚いたわ。それに勘だけど……」
そこで彩華は言葉を切った。自分たちのクラス、2年3組の教室の前に真がいたからだ。
「真……」
高志郎が声を掛けようとする。だが真はそれを無視して教室に入ってしまった。

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