PiPi's World 投稿小説

クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 39
 41
の最後へ

クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 41

「ありがとう・・・高志朗・・・さっきは・・・ごめん!!私もちょっとカッとなってつい・・・」
彩華が高志朗に謝る。


だが返事が無い。
「高志朗?」
彩華が高志朗の肩に手を当てると高志朗が力無く倒れた。
見ると右肩と左足の太股が深く斬られ、大量の血が流れだしている。
「高志朗!!」
「彩華・・・無事だな・・・?よかった・・・」
そう言うと高志朗は気を失った。
 
 
携帯から伝えられた声は酷く慌てていた。
早苗はとりあえず落ち着くように言って指示を出し、通話を切る。そのまま一度屋敷に電話を掛けて携帯をしまった。そして訓練場の隅っこで本を読む結衣に声を掛ける。
「屋敷に帰るわよ結衣」
「えっ、どうしたんですか突然?」
「高志郎が怪我をした」
「え……」
結衣の顔がサッと青褪める。
「詳しい事はまだ分からないけれど、恐らく魔術による治療が必要よ。この意味わかるでしょう?」
早苗が訊くと結衣は緊張の面持ちで頷いた。
「早苗、あのやたら長いリムジンを呼んだのは君だな」
斉賀が迷惑そうな顔をして訓練場に降りてきた。魔術師ということを隠して一介の神父として通っているだけに、このくたびれた教会にそぐわないリムジンなど停められては堪らないのだ。
「流石うちの使用人、早いわね」
(早すぎですって!)
結衣が心中でつっ込む。
早苗が車を呼んでからまだ五分と経っていない。
「とにかく帰るなら帰れ。迷惑だ」
「言われなくても、急いでいますもの。あ、これは借りて行きますわ」
早苗は何冊か魔導書を拝借し、結衣の手を引いて出ていった。
 
 
人知れず密かに力を増しつつある存在がいる。
真夜中の草薙市。市内に点在する外人墓地に土葬された死体を漁る者もその一人。
ネクロマンシーと呼ばれる死霊を操る魔術に長けたその人物は、手下の墓掘り人(アンダーテイカー)に死体を掘り出させ、自らの魔術でそれを配下に取り込んでいる。
その数、既に二百。
しかし、墓を暴き死者を冒涜する行為を許さない者もまたこの街に在った。
その名は瑞城泉梨。自らの血を媒介にして悪魔や魔獣を召喚・使役する、“血みどろの召喚師”の異名をとる魔術師だ。
「下衆が……」
先日とは別の外人墓地で泉梨は墓掘り人の姿を見つけ、忌々しげに吐き捨てた。
死者の眠りを妨げ、辱める行為に吐き気すら覚える。
「フン」
ああいう胸糞悪い連中を見たら叩き潰す事にしている泉梨は、右手の指先をナイフで浅く傷つけ、流れ出た血で左手の甲に魔方陣を描いた。
「来い、バグベア」
左手を地面に当てる。
手の甲と同じ血色の魔方陣が、彼女の周囲の地面に広がった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す