クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 40
「あーっ! お前ら守護者だな! いけないんだぞ! 他人の物盗るのは犯罪なんだぞー!」
「神有地を破壊して回るのは犯罪じゃないのか?」
指差して喚いた迅だったが、高志郎の正論に一瞬言葉を詰まらせた。
「は、破壊してるのは八頭だから俺関係無いし」
迅の呆れた理論武装に高志郎は表情を険しくする。
だが今の言動で相手が八頭ではない事が分かった。結界捜しに雇われたフリーの魔術師と言ったところだろう。
「ホントマジで困るんすよ。無くすならともかく、あんたらに奪われるのはまじーって〜」
「あ、そう。それはご愁傷様」
そういうや、彩華は走り出そうと迅に背を向け、
「だからさ〜、返してくれないってんならこう言う手段に訴えるしかないんだな〜」
いきなり正面に出現した迅に驚いて硬直した。
「彩華!」
高志郎が咄嗟の判断で彩華を突き飛ばす。
迅の回し蹴りは彩華が転んだ事で空を切った。
しかし転んだ拍子に手から地図が零れ落ちる。迅はこれをちゃっかりと拾い上げた。
「はい。回収〜」
「バカッ。なんでそこで落とす?!」
「それが女の子を突き飛ばしておいて言う事っ!?」
「あの場合、仕方なかったんだ!」
「仕方なかったじゃ済まないわよ! あんたあの時胸触ったでしょ!?」
「じゃあ蹴り飛ばせばよかったのか!? それに胸だって騒ぐほどあるわけじゃ……」
「最ッ低ッ!」
「ごぶっ!!」
言ってはいけない事を言ってしまった高志郎の顔面に彩華の拳がクリーンヒットした。
「バッ・・・彩華!!前!!」
ヒュッと風を切る音を立て彩華に迅の回し蹴りが迫る。
「ッ!!」
辛うじて体を反らして蹴りを避ける。
だが次の瞬間、迅の姿が彩華の前から消えた。
「えっ!?」
まさに『消えた』というしかない状態。
「彩華!!あぶねぇ!!」
高志朗の叫びとほぼ同時に背後に気配が現れる。
振り返る彩華の目につや消しの為に黒く塗られた刃が映った。
斬られる!!
と思い目を閉じ防御の姿勢をとる彩華。
だがいつまでたっても刃が彩華を斬る事はなかった。
「・・・?」
恐る恐る目を開けるとそこには迅の刃を防いでいる高志朗の姿があった。
「霞斬りを防ぐとは・・・やるね〜君」
「ハッ!!なんの事はねぇよ・・・」
そう言い合うと迅が距離を取り刃を収めた。
「ま、いいや〜、地図は返してもらったし、君らを殺るのは仕事じゃないし〜」
そういいながら懐から煙玉を取り出した。
「あ、そうそう。右肩と左足のガードが甘いよ〜?」
そう言うと煙玉を叩き付け、迅が消えた。