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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 36

「彼はどうしたんですの?」
「・・・『カジ』という存在を知っているか?」
早苗の言葉にシキミが重々しく呟いた。
「『カジ』・・・?」
「あぁ、人か人外か。それすら定かではない『モノ』だ。彼はそのカジの魔力片を受け入れたようだ」
「受け入れるとどうなるんですの・・・?」
「強大な力を手に入れる。その代わり、魂自体が狂気に引きずり込まれる。心にある闇の部分に呑み込まれ、その力自体に押し潰されて・・・ほとんどの場合魂が砕ける」
シキミの言葉で訓練所内がシンと静まった。
「・・・解除する方法はありませんの?」
「ないわけじゃない・・・んだが・・・」
シキミが歯切れの悪い返事を返す。
「無いんですの、あるんですの、ハッキリおっしゃってください」
早苗の迫力に押されたのかシキミが半歩下がった。
「・・・バチカンに行けばなんとかなるかもしれんのだが・・・」
シキミが呟いた。
「だが?」
「魔力の侵蝕が早すぎるんだ。カジとの魔力の相性もあるんだろうがそれでも早すぎる。今は禍寵封月で抑えてはいるが、このままだと遅かれ早かれ『第二侵蝕』がはじまる」
「『第二侵蝕』・・・?」
「あぁ、魔力片侵蝕は大きく分けて四つに分けられる。魔力を受け入れたばかりの状態が第一侵蝕(ファーストカテゴリー)、自身の魔力と魔力片が融合し始めた状態が第二侵蝕(セカンドカテゴリー)、そして完全に融合してしまった状態が第三侵蝕(ラストカテゴリー)。第三状態になるともう分離は不可能になる。そして最後侵蝕崩壊(カテゴリーエンド)、こうなるともう人ではなくなる。自身の力に魂を砕かれ、制御出来なくなった力に振り回され、見境なく殺戮を繰り広げたあと、身体が砕け散る。」
「・・・・・」
シキミの説明に言葉を失う。
「だが、厄介な性質があるとはいえ所詮は魔力片、『使用』しなければ全く問題はない。第二侵蝕の途中で止まる。しかしこいつは・・・」
そう呟くとシキミが真を見上げた。
「出会った瞬間なんの躊躇も無く俺を殺しにきやがった。多分自分の力に酔っていたかビビってたんだろう・・・こういうのが一番性質が悪い。一気に侵蝕崩壊までいっちまう」
そう言いため息をついた。
「だから落ち着くまでこうして封印してんだ」
口に加えた線香に火を着けながら早苗に言った。
「道化め、やってくれる!」
クロが忌々しげに吐き捨てた。早苗が鋭い目でクロを見下ろす。
「やはり貴方はご存じでしたのね」
「放浪しているモノ同士、バッタリ出会う事もある。もっとも、顔を見合わせた途端殺し合いが始まるがの」
「ではこのような事例にも……」
早苗の声に期待が籠る。
だがクロは首を横に振った。
「身内に危害を加えるまで暴走したのに、大人しく捕まっている者を見るのは初めてじゃ。まず吹き飛ぶまで暴れ回るからの」
「だがこいつは二、三発殴ったら正気に戻って捕まってくれたんだ。これは初めての事だ」

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