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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 35

 
ギイッと古い扉特有の音を立て書庫の扉が開く。
本特有の紙とインクの臭いが充満する部屋、さっさと歩を進める早苗に対し結衣は少々不安を感じながら本棚の間を歩く。
「気を付けてね。この本棚に入ってる本の中にはまだ貴方には危険なものもあるから」
「は・・・はい」
早苗の言葉に結衣の不安は更に大きくなる。

そうしながら歩いていると、椅子に座り眠っている白髪の青年の姿が見えた。
「あら?斉賀が言っていた先客かしら」
そう言いながら青年に近付く。
青年の手には開かれたままの魔術書が載っていた。読んでいるうちに居眠りしたらしい。ざっと見た感じ、白魔術に関する書物のようだ。椅子のそばにも何冊か書が重ねて置いてあるが、そちらも白魔術や解呪に関する書ばかりだ。
「ん……」
人の気配を感じたのか、青年は小さく呻いて目を覚ます。そして早苗と結衣を見て怪訝な表情をした。
「どちらさんだね?」
「秋田早苗、この子は結衣……斉賀の知り合い……と言ったところね。貴方が斉賀の言っていた先客?」
「そうだろうな。シキミだ。そっちには悪いが、先に使わせてもらってる」
青年は眉間を揉みながら名乗った。椅子から立ち上がって背中を伸ばす。背骨がパキパキと音を立てた。
「別にいいわ……どうやらこの中には私たちに必要な書は無さそうだから……訓練場は空いているのかしら?」
「隅っこを使わせてもらってるだけだが、あまり派手な事はしないで欲しい。人を寝かせてあるんだ」
「人を?」
早苗は怪訝な表情をする。
具合が悪い連れでもいるのだろうか。だったら何故ベッドでなくて訓練場の片隅などに寝かせるのだろう。
早苗の疑問の視線を感じてシキミは答える。
「旅をしながら除霊の真似事をやってるんだが、訓練場に寝かせた患者は厄介でな。呪い自体はよく知っているのに初めての症例なんだ」
書庫まで来て白魔術の書をひっくり返しているわけだ。うたた寝しているあたり徹夜で調べていたのではないだろうか。
「二人とも!」
書庫の入り口の方からクロの声がした。
「いきなり当たりかも知れんぞ!」
斉賀に何か訊いて来たらしい。クロの声はやや緊迫していた。
早苗と結衣が行くと、クロは二人を先導するように更に奥へ進む。地下への階段を下りて訓練場に入る。
 
訓練所に入り最初に目に入ったのは、光る二つの目を持つ巨大な海坊主のような黒い物体であった。
「これは・・・!!」
恐る恐る近寄るとその黒い物体の中に人がいる事に気付いた。しかもその人物は二人も良く知る人物真であった。
「真君・・・?」
虚ろな目を開き、四肢を力なくダラリとしながら黒い物体の中で浮いている真。こちらの呼び掛けにも全く反応を示さない。
「無駄だ。『歪』の『禍寵封月』で封印している状態だ。君らの声は彼には届かんよ」
少し遅れて降りてきたシキミが二人に言う。

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