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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 34

「そうなんですか?」
「入って見れば……わかるわ」
早苗が扉を開ける。
礼拝堂は狭かった。長椅子がズラリと並び、通路は二人並んで通るのでやっとの広さしかない。
「誰かと思ったら、こりゃまた珍しい組み合わせだ」
言いながら奥から出てきた男性を見て結衣は絶句した。
おそらくこの教会の神父なんだろう。黒衣に身を包み、胸にはロザリオが掛かっている。
だが髪は明らかに染めたとわかる金髪で、耳にはピアス。手の指にはシルバーリングがはまっていた。髑髏や剣といった神父には似つかわしくないデザインもある。
はっきり言おう、とてもうさん臭い。
結衣は一目で彼が噂の人物であると確信した。
「久しいな斉賀」
「ああ、そうだなクロ。意外な組み合わせだが何の用だ? 見たところ初めての顔もいるが」
「私とこの子は書庫と訓練場を借りに来ただけですわ。よろしいでしょう?」
早苗は真剣な口調で言った。見れば彼女の目は明らかに警戒している。
どうやらこの神父はうさん臭いと同時に油断ならない相手でもあるらしい。
「先客が居ても良いと言うならいいぞ」
神父はそう言うと結衣に向き直った。
「斉賀 硫人。見ての通りここの神父だ」
「あ、どうも。島谷 結衣です」
右手を差し出されて結衣は思わず握手してしまう。だが手と手が触れ合った瞬間、とてつもない怖気が背筋を走った。
結衣は思わず手を引っ込める。
斉賀が意地の悪い笑みを浮かべていた。
「斉賀、新人を驚かすものではありません」
「そんなつもりは無かったんだけどな」
「なお悪いわ」
クロが斉賀を睨みつける。
おお怖、と斉賀は肩をすくめた。いささか芝居がかったそれが、早苗の気に障ったらしい。更に態度を硬化させる。
「先客がいようとも、私達は私達の成すべき事をするだけですわ」
「成程、正しいな」
結衣は一人、この険悪な雰囲気にうろたえた。
確かに胡散臭くて油断ならない人物だが、結衣は何故か嫌いになれない人だと判断していた。
直感だから、何故と問われても答えられない。もっとも、信頼出来るとは思ってないが。
その不穏な空気を破ったのは、クロの大きな溜め息だった。
「ふぅ・・・敵ではないのだからそういがみ合うこともなかろうに・・・それはそうと先客がおるのか?」
クロの言葉に斉賀が軽くうなづく。
「『教会』の関係者、しかもエクソシスの・・・ってまぁ会えばわかる。そんな堅い奴じゃねーし」
軽く早苗を見ながら呟く。
その言葉を聞いてか早苗が少し怒ったような表情を浮かべ、結衣と共に書庫に向かって歩いて行ってしまった。
「・・・相変わらず生きにくい奴じゃなお前さんも」
「ま、こればっかりは産まれついての性分なもんで」
そう肩をすくめる斉賀に対し、クロは再度ため息をついた。

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