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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 30

「わ、わかった」
ヘタレよばわりされた友人を若干哀れみながら高志朗は返事を返した。


場所は飛んで町外れの土手
そこに一人の青年が座っていた。
「っあ〜ぃ。疲れたねぃ・・・全く。瞬間移動系の魔術でも習おうかねぃ・・・」
脇に置いたコンビニ袋をガサガサしながら呟く。
「でもまぁ今更修業し直すのもめんどいしねぃ・・・」

取り出したあんパンの袋をバリッと破り口にくわえる。
「それにしてもお金入れたら飲み物が出てくるなんて、便利な世の中になったもんだねぃ」
カリカリとミルクティーのタブを爪でひっかきながら呟く。
プシュッとプルタブを開けあんパンとミルクティーを交互に口に運ぶ。
「さてっとぃ、」
グイッとミルクティーを飲み干し屑カゴに投げ入れる。
「なに用だぃ?カジさんよぃ」
青年の言葉と同時に闇夜からフワリとカボチャ頭が舞い降りた。
「や、一仕事頼みにキタヨー」
片手を挙げて挨拶をすると青年の前に立った。
「この街にいる『守護者』の監視をお願いしたい、必要なら接触してもいいからさ」
「それも計画の内かぃ?」
青年の問いに、カボチャ頭に指を当て少しオーバーなアクションで考えるポーズをとる。
「んー、微妙な所になんね。ほっときゃ計画の妨げになるし、上手に美味しく利用しちゃえば一気に計画を加速できる感じ?みたいな?」
「・・・ふんむ、了解だねぃ。めんどいけどまぁやれるだけやってはみるかねぃ」
「ま、最悪潰しちゃっても全然構わないしね。それにあっち側には『アルカナ』達がついたみたいだし頑張ってね〜」
ヒラヒラ手を振るとまた闇に消えて行った。
「『アルカナ』ねぃ、まぁ・・・とりあえず寝るとするかねぃ・・・」
そういうとゴロリと土手の芝生の上に寝転がった。
 
 
「以上で報告を終わります」
月明りの礼拝堂に氷室の声が響く。
彼は普通にしゃべっているだけだが、まわりが静かなのと礼拝堂が音を反響する構造になっているせいで、必要以上に大きく聞こえた。
氷室の報告の内容はもちろん今夜遭遇した高志郎達のことだ。
「巫女が目覚め、他の守護者二人にも覚醒の兆しあり、か……」
呟いたのは長椅子の最前列に座る少年。氷室は遥か後ろ、礼拝堂の入口の扉の前に酒井と並んで立っている。
その位置関係は彼らの上下関係の現れであり、同時に氷室達が少年に対して抱く畏怖を物語っている。
「早々に始末した方が良いのでは?」
少年に甘えるように寄り添っている少女が言った。
年の頃は高志郎達と同じくらい。神社の巫女のように白衣と緋袴に身を包んでおり、キリスト教の礼拝堂には似つかわしくない格好をしていた。
少年は少女の言葉が聞こえなかったかのように押し黙り、髪を一房手にとって口付ける。少女の頬が桜色に染まる。
「そう急ぐことは無いさ。今はまだ夏前、万霊節までは時間がかなりある。それまでに始末をつければいい」
「では……」

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