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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 28

だがマナセはそのまま話を続ける。まるで続きにこそ高志郎達の恐怖の真相があるといわんばかりに。
「八頭とは、件の娘が生んだ彼奴の一族の末裔であり、彼奴の生まれ変わりそのものじゃ。奴等は封印のうちより力を取り出し、その力を持ってこの地の者たちに復讐を目論んでおる。そうなる事がわかっていたからこそ儂は一つの術を対策として遺した」
「対策、としての術? 封印を強固にするものではないわね……?」
「封印の解呪は避けられぬ。対策として遺したのは守護者たちじゃ」
「俺たちに?」
「そうじゃ。八頭を倒せるのはかつて彼奴を退けた者だけ。故に儂らはこの時代に転生した」
その言葉が意味することは一つ。
「俺たちも……お前と同じなんだな?」
「うむ。封印を施した四人を儂の魔術でこの時代の守護者に転生させたのじゃ」
荒唐無稽な話だ。だが一方で高志郎は妙に納得してしまった。
転生の話が本当なら彩華に感じた不思議な親近感も筋が通る。
(なら、あの夢は……)
「うっ……」
不意にマナセの身体が傾いで、そばにいた籐子が慌てて支えた。
「どうしたの!?」
「くっ……時間のようじゃな」
マナセの気配が薄れる。もうあまり話してはいられないらしい。
「よいか、守護者がすべて揃わねば八頭は滅ぼせぬ。最後の一人を探し出すのじゃっ。身体に刻まれた聖痕が、目印となろう」
そう言った途端マナセの首がガックリと落ちて結衣の身体が弛緩した。
そして次に顔を上げた時、彼女は結衣に戻っていた。
「こー兄……」
「結衣、大丈夫なのか?」
「うん。力を使って魔力が枯渇しているだけだから」
「結衣?」
「話は全部わかってるよ。それがわたしの力だから」
結衣が言うに、彼女の魔術は感覚を共有して同期を取るものらしい。
簡単に言ってしまえば他者と繋がる事でその知識や経験、記憶といった情報をものにできるのだそうだ。
「では……さっきまでの貴女は……前世の自分と繋がっていたのね?」
早苗の問いに結衣は頷いた。
結衣の能力についての話が終わったところで彩華が口を開く。
「大体の情報は揃ったわね。これからの事を話しましょ」
「なら私はそろそろ失礼するわね」
彩華の言葉を見計らったように泉梨が立ち上がる。
「待てよ。これからの事はいいのか?」
「こう言ったら冷たいかもしれないけど、私は話を聞きに来ただけなの。協力するとは一言も言ってないでしょう?」
確かにそうだ。
だがそれで、はいそうですかと納得するほど高志郎は物分かりが良くはない。
泉梨もそれが分かったのだろう。高志郎の睨みを受け流しつつ言う。
「そう睨まないの。あなた達の邪魔はしないし、借りはいずれ返すわ」
「……わかった。貸しにしておく」
「ありがとう」
泉梨はお礼とばかりに投げキッスを高志郎にして龍海家を出て行った。

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