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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 27

「呪詛や結界、封印といった長期的な効果のある術は術者との繋がりができる……そのため術が破られると術者にもダメージがある」
「それが【呪詛返り】という現象」
早苗の説明を泉梨が引き継ぐ。
「この地の封印を施したのが前世のこの子という事は封印がこの子が直接施した術である事と同じ。だから封印が破られた時にダメージを受けてしまったのよ。もしかすると一つ目が壊された時にもなにかあったかも」
「なら、結衣が力を暴走させたのはその弾みか?」
「そうよ……刺激された力が急に溢れ出して制御できなかったのよ」
「うぅむ……」
説明を聞きつつ、器用にも腕を組んでいるクロが唸る。
「封印とこの子が繋がっているとするとだ。この子になにかあれば封印にも悪影響が出る可能性があるのでは?」
クロの推理を前世の結衣は頷いて肯定する。
「普通に死ぬならばまだ良い。しかし外から鬼児の力を受けて死んだのなら、まず間違い無く封印は砕けるじゃろう」
これで結衣が狙われた理由がハッキリした。
結衣を殺せば全ての封印を一つずつ破壊していく手間が一気に省ける。
「なるほど、これで八頭の動きの理由も分かった。しかし二つわからない事がある」
クロは前世の結衣・マナセを睨むように見た。
「一つはなぜ貴方がこの場に出てきたのか。そしてもう一つは八頭とは何なのか?」
おそらくそこが今夜の出来事で出てきた一番重要な疑問だろう。
なぜ鬼児であるはずの八頭が、わざわざ化け物の一部を取り出そうとしているのか、それが分からない。本来の鬼児ならば彼らはこちらと一緒に封印を守る立場にあるはずだ。
マナセは答える。
「一つ目は簡単じゃ、二つ目を伝えるために出てきた。一応守護者の一族には伝えたが、伝承が失伝していないとも限らんかったからの」
実際、龍海家では伝承が失伝していたし、橘家は彩華だけしかいない。結衣の血筋にいたっては家名すら不明である。守護者たちの先祖が置いた救済措置、といったところだろうか。
「力をこの地に封印され我等に斃された化け物は今わの際に言葉を遺しおった。己が子をヒトの娘に孕ませた、その娘が生んだ子がやがて一族を作り、いずれその中から奴が転生し、封印を解いて力を取り戻すとな」
「……っ!」
マナセの言葉を聞いて、高志郎は背中に冷たい感覚が走るのを感じた。
なぜだか今の言葉には聞き覚えがある。だが実際にはそんな記憶は無い。
ふと気が付くと彩華が不安げにこちらを見ている。
「彩華、お前も恐いのか?」
「“も”って事はアンタもそうなの?」
「ああ……」
「どうしたの? 二人とも顔が真っ青だわ」
籐子が心配そうに訊いてくる。だがなんと答えたものか高志郎にはわからなかった。
皆が心配そうに見つめる中、原因に気付いたのはマナセであった。

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