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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 26

とは言うものの、籐子の声は全然困った様子は無かった。能天気さもここまで来ると大物どころか病気である。
「同じ守護者なら、そこの子が知ってるんじゃないの?」
泉梨が彩華を指差す。しかし彩華は暗い顔で首を横に振った。
「あたしは、何も知らない。お父さんは知ってたんだろうけど、もういないから……」
「ごめんなさい、軽はずみに訊いてしまって。それじゃあ、残るあの子は?」
あの子とはソファで寝ている結衣のことだ。氷室達の口ぶりでは彼女も守護者ということになる。
今度は籐子が首を横に振る。
「ダメだと思うわ。さっき島谷さんのところに電話してみたのだけれど。この子、養子だったのよ」
場の空気が凍りついた。明るく活発な少女には酷な真実である。
「となると……生まれた血筋が守護者だったのね……調べるのは時間が掛かりそう……」
「お前っ!」
結衣を気遣う様子も無く、冷静に言った早苗に高志郎は食って掛かる。しかし振り上げた手は彩華に止められた。
「……悪かった」
「手がかりは無し、それじゃその子が狙われたり急に力に目覚めた理由もわからずじまいか……」
大きくため息を吐いた泉梨はポケットからタバコを取り出したが、灰皿が無いのに気付いて引っ込めた。ついでに小さく舌打ちする。どうやらこの泉梨という人物は早苗と似て、普段は猫を被っているらしい。
「それは……儂から説明しよう」
妙に年老いた口調で結衣の声がそう紡いだ。
皆一斉に結衣の方を見る。すると目を覚ました彼女が、上体を起こしていた。ゆったりとした動作でソファに座りなおす。
「お前……結衣じゃないな。誰、いや何だ?」
警戒した様子で高志郎が問う。だが結衣は彼の眼光に怯むどころか、微笑んだ。
「一目で気付きおったか。やはり来世でも良い関係を築けたようじゃの」
「質問に答えろ」
目の前に突如現れた不可解な存在に、みんなが警戒していた。ただ一人、彩華を除いて。
「待って。なんだかわからないけど、敵じゃないわよ」
彩華は今にも武器を抜きそうな一同を宥めた。
「……わかった」
警戒心を一番先に引っ込めたのは意外にも一番警戒してそうな高志郎だった。彼が態度を緩めたのを見て、他の皆も同じようにする。
「さて、質問に答えようかの。儂はこの娘の前世の人格・麻那妹比売(マナセヒメ)じゃ」
「前世、だって!」
話が突拍子も無い方向に飛んで一同のほとんどが絶句する。だがその中で高志郎と彩華は絶句しながらも心の中出に納得している自分を感じた。
「そう、そして二千五百年前に草薙の地に君臨していた荒ぶる蛇神を封じた巫女こそ前世のこの娘、つまり儂なのじゃ」
「ああ……なるほど。だから封印の破壊に反応を……」
「呪詛返りってわけね」
何か思い当たることがあったのだろう、早苗と泉梨の魔術師二人は途端に納得しだした。
「どういうことよ早苗?」

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