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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 24

「何ぃっ!?」
酒井は歯を剥いて氷室を睨んだ。十年来の宿敵を前にして退くなど納得できないのだ。
「冷静になれ。この戦力差では我々が不利だ。ここは退くぞ」
氷室に凍り付くような声で諭され、酒井は舌打ちしながらも頷いた。
それを見届け、氷室は高志郎と彩華をに向けて言う。
「守護者どもよ、覚えておけ。我らは【八頭】。古の蛇神に仕える者だ。残る封印は既に半数の二つ。もはや解放を避けることなどできん」
「なんだって……!」
氷室の宣告に高志郎は目を見開く。封印の解放が確定したなら、草薙市の運命は絶望的だ。
「いずれ封印は解け、この地に禍が降る。それまで束の間の生を謳歌するがいい」
氷室はそう言い残し、家々を跳び越えて去って行った。
「てめえは必ずこの手で殺してやるよ。首を洗って待ってな」
酒井も彩華に一言残し去って行った。
『……』
高志郎と彩華はしばらくの間無言で氷室達の去った方角を見つめた。
「ご苦労だったフルフル。戻っていいぞ」
電柱の上から先程の女性の声が聞こえる。高志郎が思い出したように見上げると、彼女の傍らから翼を生やした牡鹿の悪魔が消えるところだった。
女性が軽やかに飛び降りて来る。
「さぁ、案内して頂戴!」
「はぁ?」
「とぼけないで。君達は何か知っているんでしょう? だったら説明があって然るべきじゃない?」
確かに知っているというのは本当だが、説明すべきかどうかは判断が分かれる。女性が信用できる人物とは限らない。
高志郎の迷いを悟ったのだろう。女性は彼の胸倉を掴んで顔を引き寄せると。
「いいから黙って案内しろ」
と、ドスをきかせた声で脅してきた。
高志郎は呆気に取られたが、そんな彼の耳にパトカーのサイレンが聞こえて来る。付近の住民が戦いの音を聞いて通報したのだろう。
警察に関わる訳にはいかない、場所を変えざるを得ないだろう。
「俺の家へ」
駆け込めそうな場所で一番近いのはそこだった。
高志郎は気絶したままの結衣を背負い、彩華に目を向ける。彼女は俯いて唇をかみ締めていた。
「行こう彩華」
「……ええ」
歩き出す高志郎のあとを彩華はのろのろと付いて来る。
自分を呼んだ高志郎の声が今までで一番優しかったのには気付かなかった。


高志郎たちの戦いに割り込んだ女性は瑞城 泉梨といってフリーの召喚師だそうだ。
龍海家に落ち着いた高志郎は泉梨に簡単に事情を話した。
お返しに泉梨も自分がこの街で異変と、その異変に抱いた疑問を話した。
「明らかに何者かの介入があるの。それもかなりレベルの高いネクロマンサーのね」
「ネクロマンサーか……奴等と関係がないとは言い切れないな」
「私に言わせれば今夜のあなた達の喧嘩で、ハッキリしたわ」
とびっきりの異変、結衣の魔力の暴走を見つけて駆け付けてみれば同類であるはずの鬼児同士が喧嘩していた。泉梨が事情を聞いてきたのも当然だろう。どちらが異変を引き起こしているのか見極めなければならないからだ。

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