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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 23

「っ! あああぁっ!!」
顔面を狙ってきた正拳は何とかガードしたものの、あまりの威力に吹っ飛ばされた。電柱に激突する。
「彩……っ!」
「良いのか? 今はあちらに向かえば自分が巫女を殺すぞ?」
「……くそっ!」
高志郎は歯噛みした。今すぐ彩華を助けに行きたかったが氷室を放置するわけには行かなかった。
「十年前テメエにやられた火傷がな、いまだに疼くんだよ。テメエを殺らねぇ限り治ってくれそうもねぇんだ!」
酒井は呪詛を吐き出した。表情は憎悪に恐ろしく歪んでいる。
しかし、憎悪に駆られているのは彩華も同じだった。
「思い出した……十年前のあの日、アンタはその腕でお父さんの胸を……」
彩華の体から噴出す炎は段々と大きくなり、より熱く凶暴性を増していく。
激しい怒りで制御を乱した炎は周囲だけでなく、彼女自身まで影響を及ぼした。服の裾や袖が少しずつ焼けていく。
「アンタが殺した……アンタがアンタがアンタがアンタが!!」
服の背中部分が爆ぜ、炎が噴き出した。炎は意思を持つかのように集まり、翼のようなものを形作る。
「ハッ、出やがったな炎翼!」
酒井は胸に手を当てた。服の下に大きな火傷があるのだ。
「疼く……火傷が疼きやがるぜ。ぶっ殺してやる!」
「それはこっちの台詞よ! お父さんを殺したアンタを絶対に許さない!!」
紅蓮の翼がさらに熱量を上げた。
一方、彩華に触発されたかのように高志郎の方にも変化が現れていた。
(もっと速く)
縦横に動く蒼い斬撃が氷室を追い詰めていく。
(もっと鋭く)
恐ろしく硬かった氷剣に刃こぼれが生じる。
(もっと、強く!)
渾身の一撃が氷剣にぶつかり、氷室を吹っ飛ばした。氷剣にヒビが入る。
「ぬ、ぅ。それが貴様の能力か……?」
氷室が高志郎の剣を見て言った。
不思議に思った高志郎は自分の手元まで視線を下げた。
「これは……!」
気の光が束となって短剣を覆い、蒼い光の長剣を形成していた。試しに路面に向かって振り下ろす。光の切っ先は何の抵抗も無くアスファルトに沈んだ。
(なんだか知らないが、使えそうだな)
正体不明の能力が突然目覚めたことは不気味である。しかし氷室は格上の相手、何であろうと強力な能力があるのは心強かった。
蒼い光の剣を正眼に構える。
蒼閃破の体勢、高志郎は一撃で氷室を倒して彩華を助けに行くつもりだ。
彩華のほうも炎の翼が赤々と燃え、今にも飛び出そうとしている。
2人がそれぞれの敵に向かって以降としたその時、女性の声が響いた。
「フルフル!」
雷電が天を裂いて落ち、地面を穿つ。
「ストップだ。1ミリでも動けば次は当てる」
乱暴な口調が上から降ってくる。電柱の上にパンツスーツ姿の女性が立っていた。
「今夜は両者とも引け」
「……行くぞ酒井」

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