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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 21

「それじゃ、ま・・・」
再び拳を振り上げる
このまま振り下ろせば真の死は間違いない
「(くそ・・・俺に力があれば・・・力があればあんな奴!!)」
憎悪にも似た力の渇望
大切な者、伝えたい思い、その全てを奪おうとする理不尽な力
その理不尽すら螺子曲げてしまえるほどの力を真は求めた
「死ねや」
男の鬼の拳が真に向かい振り下ろされた
 
一瞬の静寂
間違いなく男の拳は真を押し潰した

筈であった
しかし、その拳の前には真ではない『なにか』がいた
「うふふふ・・・イイヨイイヨー。実にナイスな心のシャウトだよー」
カボチャの頭に執事の着るような黒い制服に白手袋
人の形をした別のモノ
そんな形容しかできないようなモノが鬼の拳を片腕で受け止めていた
「『力が欲しい』、イイヨイイヨー、あげようじゃない『力』を」
そう言うとカボチャ頭の指先に闇が集まり、黒い球状の物を形作る
「賭けをしよう。これを受け取って闇に呑まれれば僕の勝ち、あくまであがらい闇に撃ち勝てば君の勝ち、どうだい?悪い賭けじゃなくなくない?」
スゥッと真の前に黒い球体が浮かびあがった
「『力』が・・・欲しい!!」
心の叫びそのままに、真は球体を掴んだ
「う・・・おぉぉぉぉ!!!!」
その瞬間、真の魔力が爆発したように高まり、放出された
「うふふ、うふふ、楽しいなったら楽しいなー。楽しくなくなくなくない?」
魔力の高まりを確認するとカボチャ頭はケラケラ笑いながら闇に溶けていった
「く、なんだこいつは!」
カボチャの存在に気づいたのは真だけだった。鬼の男はなぜ自分の拳が止まったのか、なぜ真の力が膨れ上がったのかまるで理解できていない。
(おれの中になにかが)
得体の知れないものが正気を奪っていく。残ったのは死の恐怖に怯える心と、恐怖に抗おうとする凶暴性。
(ひとつ、伝えよう。君の力を引き出す言葉を)
自分で無い声が心の中で告げる。
(唱えろ)
「ウィルド」
真の口がそう紡いだ途端、男はまた吹き飛んだ。今度は着地できず、背中から塀に激突する。ブロック塀は崩れ、破片が男の上に降った。
「ウィルド、ウィルド、ウィルド」
連呼する。その度に真の魔力が衝撃となって迸り、アスファルトを爆散し、ブロックを破砕し、男の身体が撥ねる。
(まだだ)
男が動かなくなっても死の恐怖は消えない。原因を排除しないうちは安心できない。
(こいつを殺せば……)
真の目が結衣を捉える。
「ウィルド」
再び呪を紡ぐ。衝撃に変換された魔力が迸る。
だがその瞬間、誰かが結衣を庇って割って入った。
「あぁぁっ!」
結衣を抱きかかえた彩華は衝撃を背中に受け、結衣ごと吹っ飛んで転がった。
「なに、やってんのよあんたは!」

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