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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 20

高志郎は光の柱を睨む。近づくにつれてわかってきたことだが、それは草薙市の中央よりやや南、高志郎や結衣の自宅があるあたりから発生していた。


真は道端に尻餅をつき、目の前の光景を呆然と見つめていた。
「ああぁぁぁぁぁあっ!!」
少女の絶叫。その主は純白の光を発する結衣。
「な、なんだよこれ」
真は何がなんだかわからなかった。
泣きじゃくる結衣をなんとか宥めた真は高志郎に頼まれたとおり彼女を家に送っていこうとした。だがその矢先に例の地震が起こり、急に苦しみだした結衣の身体が発光したのだ。
頭に”鬼児”の二文字が浮かぶ。こんな現象を起こせる人間などそれ以外には無かった。
真はとにかく落ち抜かせねばと結衣に駆け寄る。揺すって名前を呼ぼうと手を伸ばす。
「ゆ、結衣ちゃ……!」
肩を掴んだ瞬間、嫌な予感を感じた真は形振り構わず結衣を抱き寄せて道に転がった。その直後、アスファルトが爆散した。
「チ、避けやがったか」
直前まで結衣がいた辺りに男が現れていた。彼は赤くて太い腕を地面に突き立てたまま舌打ちする。額に生えた二本の角と、嫌に長い犬歯が凶暴な雰囲気を放っていた。
「あ、悪鬼!」
「違ぇーよ。だがよく知ってんな。さっきのを避けた事といい、テメエ同類か?」
男に睨まれて真は竦んだ。
「なんだシロートかよ、つまんねー。そういうことならとっとと行きな。巫女を置いて行くなら見逃してやるよ」
「……巫女?」
「そいつだ」
血色の指が指し示したのは、真の腕の中で文字通り輝いている結衣。
「そ、そんなことできるか!」
「そうか、じゃあお前もここで死ね」
男は腕を振り上げる。突き付けられた明確な殺気に、真は金縛りにあう。
(ダメだ、殺られる)
予言めいた確信だった。
次の一撃は避けられない。当たれば、あの腕は身体を抉り骨を砕き肉を裂き内臓を潰し、真を死に至らしめるだろう。それは避けようの無い運命だ。
(おれは、ここで死ぬのか?)
受け入れるしかない圧倒的な事実を前に、真は抗いたい気持ちが湧くのを感じた。
(バカ言うなよ……こんなところで、こんな風に死ぬなんて嫌に決まってる。少なくとも、この想いを伝えないまま死ぬのはごめんだ!)
鬼の男の真っ赤な腕が振り下ろされる。死が真に迫る。
(おれは……生きる!)
その時、閉塞された運命が真の力を呼び覚ました。
「うおぉぉぉっ!」
「な、に!」
真の身体から灰色の光が溢れ出す。鬼の男は勢い良く弾き飛ばされた。空中で姿勢を制御し、塀の上に着地する。
「ちっ、土壇場で覚醒しやがったか!」
男は吐き捨てる。しかし怒りは一瞬、すぐに真の様子を分析し始める。
「魔術だな。だが素人だけに式を使えてねぇ。大したことねぇなこりゃ」
真に発現した力は魔力だった。しかし力といっても式を通していないため殺傷力は低い。
魔術は音楽と似ている。魔力を音、術式を楽譜と考えるならば、今の真の力は完成された楽曲には程遠かったのだ。

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