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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 3

中に入ると、外以上の暗闇が待ち受けていた。ふてぶてしい真と結衣の歩みも流石に遅くなる。
しかしそれはおそらく暗いせいだけではないだろう。高志郎は邪気と瘴気がますます強くなったのを感じていた。加えて場所も悪い、廃ビルのような場所は人外の溜まり場になりやすいのだ。ここには確実に何かいる。
ゆっくりと奥に進む。やがて天井の作られていない、吹き抜けの広間に出た。そして高志郎たちは月明かりの下に彩華を見つけた。
「な、何あれ!」
「ひっ……」
目の前に広がる光景に息を呑む結衣と真。
彩華は広間の中央にいる。しかしその周りを青白い顔をした不気味な者たちが取り囲んでいた。
「幽鬼!」
幽鬼、それは人間の悪霊が変化して実体を持った人外だ。特徴は青白い肌に生気のない表情、そして額から生えた一本の角。彩華を取り囲むものたちの特徴と合致していた。
だがその最大の特徴は別にある。
「彩華先輩、囲まれてる!」
「怪我してるぞ! あいつ等がやったのか!?」
「……! お前たち、あれが見えているのか!?」
「なに言ってるんだ! あんなにいたら嫌でも目に付くだろ!」
真はさも当然の事のように言い、結衣も頷いた。
幽鬼の最大の特徴にして最も恐ろしい所は、普通のヒトには見えないことだ。しかし真と結衣は見えると言う、それはつまり……。
(……いや、今はそんなことよりも橘だ)
彩華の手には鞭が握られていた。しかし怪我をしたのか左手で右の二の腕を押さえていて、ブラウスのその部分が赤く染まっていた。
「助けないと!」
「なんだか分からないけど、そうだな」
「待て」
幽鬼の大群に向かっていこうとする二人を高志郎は手で制した。
「俺が行く」
途端、真が不満そうな顔に、結衣が心配そうな顔になる。だがここで2人を行かせる訳にはいかない。
「真、結衣を頼む」
「でも!」
「悪いが、こういうのは専門家である俺の仕事だ。開錠せよ!」
真の文句を冷静に制し、高志郎は空間の裂け目から短剣を取り出した。そのまま何も言わず、走る。
何も無い所からいきなり短剣を取り出し、その上人間離れした速さで走っていく高志郎を見て、2人は完全に出遅れた。
高志郎は一直線に走って一瞬で幽鬼に肉薄し、その背に短剣を突き立てた。そのままそいつを蹴り上げて武器を強引に引き抜き跳躍、彩華を取り囲む幽鬼たちの上を跳び越えた。着地と同時に横に薙ぎ、後ろにいた幽鬼の首を斬り飛ばす。
「た、龍海君! どうしてあなたが!?」
「説明は後だ。まずはこいつらを片付けるぞ」
彩華の背を守るように立ち、幽鬼たちを睨みつける。数はおよそ15、高志郎でも1人で面倒見きれない。だが2人がかりなら斃せない数じゃない。
驚いていた幽鬼たちは落ち着きを取り戻し、包囲をジリジリ詰めてきた。
先手を取ったのは彩華だった。
「はぁ!」
鞭を振るい、手近に居た幽鬼を打ち据える。左から襲い掛かってきた敵は顔面を蹴り上げ、その横に居たやつの足に鞭を絡めて投げ飛ばす。
「がぁぁぁ!」
「くっ!」
後ろの気配に反応して振り返ると、2体の幽鬼が同時に襲い掛かってきていた。片方はなんとか片付けられたが、腕の負傷で鞭の動きが鈍く、もう片方は斃しきれない。
間一髪のところで高志郎が割って入り、短剣を一閃した。
「無事か?」
「え、ええ」
尻餅をついた彩華に高志郎は手を差し延べた。彼女は少しだけ躊躇しながら掴まり、立たせてもらう。
「無茶をするな。その腕の怪我はお前が思っている程軽くはなさそうだ」
「うがぁっ!」
「!」
悠長に話している暇は無かった。後方から幽鬼が襲いかかって来る。
高志郎は彩華を下がらせ、短剣を振るった。喉を突かれた幽鬼は倒れた。だがまだまだ数が多い。加減をしている余裕は無い。
高志郎は一旦間合いを空け、力を溜めた。短剣がうっすらと蒼い光を纏う。
「せいっ!」

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