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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
その他リレー小説 - ファンタジー

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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 2

ここ数日で連続して発生している怪異のせいで起こっている事件だった。本当ならヒトの目に触れないはずの怪異が、段々と目につくようになってきている。
震源不明の地震と直後に発生した瘴気と邪気、突如現れた人外たち。この街で何か厄介な事が起こっている。そうとわかっているのに未だ元凶を探り出せていない。
得体の知れない不安が高志郎の胸を苛み始めていた。


いつものように登校しいつものように授業を受ける。クラスメートたちの話は街の異変で持ちきりだったが、まだただの噂の域を出ていない。生徒たちは謎の事件に怖がってこそいたが、まだ現実的な恐怖として認識していない。
実際に怪異と戦っている高志郎はともかく、そうではない生徒たちはいつもどおりに生活していた。


放課後、街灯煌く繁華街を高志郎達は歩いていた。
前を歩く幼馴染みの【島谷 結衣】の足取りは軽い。トレードマークのポニーテールが犬の尻尾みたいに左右に揺れて、ご機嫌を表していた。
「次はゲーセンいこーぜ」
親友の【葉山 真】がこれまたご機嫌な顔で言う。
2人の表情は日々を謳歌する今時の高校生そのものだ。この世の裏を跋扈する人外の恐怖を知らない顔。高志郎はその表情が好きだった。だからこそ守りたいと思う、そして守るために剣を取るのだ。
「ん? あれ橘じゃないか?」
馴染みのゲーセンへ向かう途中、突然真が前方を指差した。小柄な結衣がぴょこぴょこ跳ねて人込みの向こうを見た。
「あ、本当だ。あれ彩華先輩だよ」
「ああ、そうだな」
長身の高志郎にはバッチリ見えていた。道の先に居たのは高志郎と真のクラスメートの【橘 彩華】だった。女性にしては高めの身長にセミロングの黒髪、そして目を引く美人である彼女は、繁華街の人込みの中でも目立っていた。
「あ、行っちゃう」
「あと尾けようぜ」
「え、おい!」
高志郎が止める間もなく真は行ってしまう。しかも
「こー兄早く行こうよ。見失っちゃうよ!」
結衣までもが追う気満々で手招きしていた。
溜息を吐きつつあとを尾いて行く。
「で、だ。なんであいつのあとを追うんだ?」
曲がり角に隠れて彩華の動向を見張りつつ、高志郎は訊く。結衣も興味深そうに真の顔を見た。
「あ、その、なんだ……ちょっとした道への興味というヤツでな、それで、えーと……」
真は茹でたタコみたいに顔を赤くして、あたふたと喋り出した。しかも内容に中身が無く、口調もどもりがち。その様子を見て高志郎と結衣は真の心中を悟った。
「なるほど、そんなことだろうと思った」
「そういうことなら力一杯応援しちゃいますよ。ね、こー兄」
「頼むからそこで俺に振るなよ」
「だー、どうでもいいから追うぞ。このままじゃマジで見失う!」
照れた真が半ば叫ぶように大声で言う。一瞬、彩華が振り返ったので高志郎はひやひやさせられた。
気付かれなかったのか彩華はそのまま歩き出す。3人は引き続きあとを追った。
しばらく雑踏を歩き、やがて角を曲がる。大通りから一つ離れた道を歩き、また角を曲がる。そうして歩くうちに段々と人通りが減ってきた。やがて人通りのほとんどない裏道に入る。おかげで高志郎たちは彩華に気付かれないように距離を取らざるを得なくなった。
「どこに行くのかな?」
「俺が知るか」
「むぅ……」
高志郎の素っ気無い答えにむくれる結衣。だがそれに構っている余裕は無かった。なぜなら彩華を追って歩くうちに胸の奥がザワザワしてきていた。昂揚感と不快感が湧いてくる。身体の芯がカッと熱くなってきて興奮する。
(これは……まさか!)
鬼児の血が騒ぐ感覚。近くに人外がいる時特有の感覚だった。
「見失っちゃった?」
結衣の声で意識が引き戻される。見ると前方に彩華の姿は無かった。高志郎は内心ホッとした。これで追跡は終了、2人を安全な場所に連れて行ける。
だがその時、真が何かを見つけた。
「見ろよこれ」
建設途中で打ち捨てられた廃ビル、その入り口を仕切るビニールの下。敷地に一歩入れば無舗装で土と砂が剥き出しの地面になっている。そこにまだローファーの足跡が残っていた。
「きっと橘さんのだ。入ってみよう」
「おい、真。まったく……世話が焼ける」
高志郎は、こんな時に限って発動する真の目ざとさが恨めしく思えた。ずんずん進んでいく2人を舌打ちしながら追う。

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