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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 18

高級住宅街を北に向かって歩く、目指すは北の封印だ。
屋敷を出る前に早苗が知り合いに調べさせた所、草薙市の北端あたりに今まで無かった古い神社の出現が確認された。どうやらそこが件の封印らしい。
住宅街を抜けて山道に入る。しばらく歩いていると、急斜面に作られた細い石段が見えた。
「この上か?」
「そうじゃない? あたしここに来た事あるけれど、前はこんな石段無かったもの」
「噂どおり、かなり強力な催眠結界で守られていたようですわね。残滓が残っています」
石段にぺたぺた触れながら早苗が分析する。
「まさか鬼児である彩華を騙すなんて……きっと恐ろしい使い手だったのでしょう」
「そうね」
「そうまでして隠さなければいけなかったのか……」
「ええ、まるで封印を狙っている誰かに見つからないようにしているようです」
「まさか、な」
早苗の発言に高志郎も彩華も嫌な予感を感じた。
「とにかく、行ってみよう」
高志郎は石段に足をかけ、上り始める。階段は急で、足元も暗いので細心の注意を払って進んでいく。
5分ほどして、3人は境内に到着した。
天頂から降り注ぐ月の光が照らし、全体像を闇に浮かび上がらせる。
高志郎たちは言葉を失った。
神社らしき建物は無残にも倒壊していた。今はただの木材の山になっており、原形を止めていない。
絶句する3人の耳に冷たい声が聞こえてくる。
「とうとう現れたか守護者ども」
声を掛けてきたのは青年だった。彼は瓦礫の上に立ち、氷のような瞳で高志郎たちを見下ろしている。声からは身も凍るような殺気が感じられた。
「だが遅かったな。既にこの封印は意味を成していない。他の3つが解かれるのも時間の問題。だが……」
「なにわけのわからないことを……むぐっ!」
喋ろうとした彩華の口を早苗が塞ぐ。いい判断だ。情報が少ない今は、相手が勝手に喋ってくれているこの状況を最大限に利用した方が良い。
「貴様らに動かれると目障りだ。貴様らの誰がどの神器に対応するかは知らないが、一人残らず始末してやる」
青年は手をひと振りした。すると白い煙が発生し、青年の手の中で剣の形を成す。煙が晴れると、氷で出来た一振りの大剣が現れていた。
「はっ!」
瓦礫の上から跳び、空中で氷の大剣を振り被る。
冷気が剣に集まり白い煙が発生する。
高志郎と早苗は左に、彩華は右に跳んで身を躱した。直後、氷の剣が3人のいた辺りに炸裂した。
凄まじい冷気が地面を凍らせる。青年は凍ったフィールドの上に悠然と立った。
「自分は【氷室 零児】。全てを凍らす氷の剣士」
「闘士系か……」
「いかにも」
「だったら、火には弱いでしょう!!」
彩華の身体から紅蓮の炎が噴き出す。炎の鞭・ヴァルログが氷室を襲う。だが
「ふん!」
気合一発、炎は白い冷気に掻き消され、鞭は素手で受け止められた。

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