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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 17

「古の封印の崩壊、大戦の発端としては十分ね」
彩華の言葉を否定する者はいない。
過去にも、今回と似たような形の戦が各地で起きている。そのすべての場合に於いて、強大な力を持った要素が原因の一端として関わっているのだ。
「古の化け物の正体に心当たりは無いのか?」
「文献も無いからな確かではないが、ひとつ……」
「蛇、ではなくて?」
クロが言い終わる前に早苗が割り込んだ。だがそれでいいらしい、クロは首肯した。
「クサナギと聞けば思い浮かぶのは三種の神器の宝剣、しかしクサナギの本当の意味は……」
「奇妙な蛇、ですわ。実際に蛇が動き回っていることから見ても可能性が高そうです」
「待ってくれ、そうなると封印の魔物はヤマタノオロチかもしれない」
クロと早苗の推理から導き出される予想に高志郎は戦慄を覚えた。
三種の神器の宝剣、天叢雲之剣こと草薙の剣がヤマタノオロチの尾から発見されたことは高志郎も知っている。その神器と同じ名の街に蛇の力が封印されているなら、源になった魔物がヤマタノオロチであっても不思議ではないのだ。もしそうなら勝ち目は皆無だ。ヤマタノオロチは蛇神の中でも最悪なのだ。
「最悪の場合はそうだろう。しかしこれはまだ推論に過ぎんし、封印もまだ残っている筈だ。それらを守り切ればいい」
「じゃあまずは北の封印が破られた原因を探らないといけないわね」
彩華はもともと行動派なのだろう、早くも次の行動指針を定めたがっているようだ。
「では破られた北の封印を調査しましょう。ところで他の封印の場所は?」
「わからん。あれは強力な催眠結界て守られてるらしくてな。見えやしない。北側にしても破られて初めて知ったくらいだ」
強力な人外のクロがわからないのだ、高志郎達が探しても無駄だろう。
「わかった。他の封印の場所についても調査する」
高志郎はこう言ったが、あまり期待していなかった。
他の封印の手掛かりを置いては、分けて封印した意味が損なわれるからだ。だから今回は封印破壊の真相が先だろう。
「話は済んだな。では私は街に出る。用事があるのでね」
「用事? なによ、それ?」
てっきり一緒に調査に赴くと思っていた彩華は少し不満そうに言った。
「なに、相棒探しさ。これが片付けば、今以上に力になれる」
「む、そういうことならいいけど」
「では調査は任せた。またな少年」
そう言って庭に出たクロは軽々と塀に飛び乗り、あっという間に行ってしまった。
「逢魔ヶ刻にはまだ早いわ。簡単に夕食を済ませておかない?」
彩華の提案に無言で頷いた早苗は、部屋を出て行った。


逢魔ヶ刻、あらゆる魔が活動を開始する時刻。
別に全ての人外がこの時刻に動き出すわけではないが、逢魔ヶ刻を過ぎると悪いモノが急激に増えるため、鬼児の活動も自然とその時間に始まる。
高志郎たちも例外ではない。彼等も逢魔ヶ刻を過ぎたのを見計らって、秋田邸を出た。

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