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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 15

「日が暮れるからとっとと行きましょ。まったく、なんであたしが道案内なんかしなくちゃならないのよ……」
ブツブツ言いながらも彩華はちゃんと道案内をこなした。
最寄りの駅まで歩き、市内北部方面の電車に乗る。この際、クロは駅に忍び込み、車両の屋根に強引に乗り込んだ。
櫛灘という駅で降り、また歩く。市内北部は高級住宅と新興住宅の入り乱れた地区だ。それだけあって、家々は新しいものかそうでなければ大きく豪華なものばかりだった。
「ここよ。と言っても入るにはあっちの門に回らないといけないけれど」
辿り着いたのは周囲の建物よりも二回り以上大きな武家屋敷だった。彩華が指し示した門まではまだ遠い。端っこに居るとはいえかなりの広さだった。
「金持ちだとは聞いていたがここまでとはな」
早苗が裕福な家庭のお嬢様だというのは学園では常識だが、その程度は高志郎の想像を軽く超えていた。
「当たり前よ、早苗は秋田グループの代表だもの」
「なっ!」
これには流石の高志郎も目を見開いて驚いた。秋田グループと言えば世界的な巨大企業だ。その代表を女子高生の早苗が務めているという話には驚きを隠せなかった。
「信じられないでしょうけど本当よ。あの子が代表になってから業績が上がりっぱなしなくらいなんだから」
彩華は誇らしげにまるで自分の事のように言った。
「仲が良いんだな」
高志郎は率直な感想を漏らす。彩華は胸を張って返した。
「当たり前よ。親友だもの」
「……そうか」
高志郎は彩華につられて笑った。
塀に沿って歩き、やがて門が見えてくる。
「ねぇ、あれ」
「真、それに結衣か!」
彩華が指差した門の前には制服姿のままの真と結衣が待っていた。
「あんたたちどうしてここに?」
「どうしてって、おれ等も話しに参加しようと思ったんだけど……」
真は結衣をちらちら見ながら言いにくそうに話した。
高志郎は結衣を見下ろす、彼女は追い詰められたような表情でそこに立っていた。
「こー兄、わたしね……」
「邪魔だ。帰れ」
結衣の言いかけた言葉を高志郎の冷たい言葉が遮った。
「こー、兄?」
結衣は信じられない表情で高志郎を見上げる。声からは戸惑いが聞いて取れた。
「聞こえなかったか。もう一度だけ言う邪魔だから帰れ」
「……っ!」
「おいっ結衣ちゃん!」
結衣は顔を伏せて、走り出した。真が声を上げるが、全く聞こえていない。
「真、結衣を送って行ってやってくれ」
「……わかった」
真は不満そうにため息を吐き、結衣の後を追った。

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