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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜
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クサナギ〜蒼い剣と紅蓮の翼〜 14

登校中、歩きながら物思いに耽ってしまっていたらしい。
「ごめん、ボーっとしてたわ」
「別にいいわ……でもなにか気になる事でも?」
「それは……」
「たとえば……彼のこととかは?」
「ばっ、な、なんで高志郎が出てくるのよ!?」
彩華はどもって必要以上に声が大きくなる。動揺しているのは誰が見ても明らかだった。
そんな彩華とは対照的に早苗は冷静に切り返す。
「私は《彼》としか言ってない。高志郎の名前は出していないわ……」
「う……」
ものの見事に嵌められた。言い訳の余地が無く、彩華は赤面して俯いた。
早苗の容赦無い追求は続く。
「好き?」
軽い爆弾発言に彩華は激しく取り乱す。
「んなわけあるかっ! あんなすかした奴好きでもなんでもないわよ! あたしはただ……」
「ただ?」
「……」
彩華はそれ以上言えなくなった。まさか夢に出てきたとは死んでも言えない。そんなの好きだって言ってしまうのと同じだ。
「い、行くわよ。もたもたしてたら遅刻するんだから!」
「まだ余裕……」
「いいから行くの!」
彩華は早足で歩き出す。その背中を追いながら、早苗はからかい過ぎたことを反省した。
10分ほどして校門の前に辿り着く。丁度その時、反対の方角から高志郎と結衣も到着した。
『あ』
結衣と彩華がお互い同時に気付く。
「おはよう……高志郎、それに島谷さん」
「ああ」
「おはようございます秋田先輩」
「丁度良い、2人とも今夜話がある」
話とはクロとのことだ。人外との会話を一般人に見られるわけにはいかない。どこか邪魔の入らない落ち着ける場所で話したかった。
「それなら……私の屋敷にしましょう」
「いいのか?」
「貴方の家は以前彩華がお邪魔したから、今度はこっちの番」
「わかった」
「彩華も、いい……?」
「……」
彩華は返事をしない。ただ黙って高志郎を睨んでいた。
彼女は高志郎と結衣が一緒に登校してくるのを見て、嫌な気分になっていた。
何故かはわかっていないが、高志郎が他の女の子と一緒にいるという光景が気に入らなかった。
(なによっ、他人の夢に勝手に出てきたくせに!)
と、思った。
何故睨まれてるのかわからない高志郎が訊く。
「どうしたんだ彩華?」
「なんでもないわよ」
彩華はぶっきらぼうに返し、さっさと行ってしまった。
取り残され、呆気にとられる高志郎。その横で早苗が実に楽しそうに笑みを浮かべたのを結衣だけが目撃した。


授業も終わって放課後。
高志郎が家に帰ると既にクロが待っていた。
「待たせたな」
「構わないさ、学業に専念するのは良い事だ。して、仲間はどこに?」
「その事なんだが、場所はここじゃなくなった」
「そうか」
クロを居間に待たせ、高志郎は自室で着替えを済ませた。再び居間に下り、少し待っているとインターホンが鳴った。
「来たわよ」
出迎えると、ぶすっとした表情で彩華が玄関口に立っていた。

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