デストロイヤー 37
「ジェイナス、貴様…!!」
「そんな恐い顔をするなよ、この仕事は俺の管轄じゃないんだからよ…、あんまり興奮するとお前まで“天使”になっちまうぜ?」
「うおおおおお!!!」
叫び声と共にデュランの瞳が黄金色に変化した、背中からは紅蓮の炎で形作られた翼が突き出て、それは大きく広がった。時折プラズマが彼の体をなぞるように発生している。
「自己覚醒!?チッ、嫌なデータ漏れだ…、逃げるか!!」
ジェイナスが拳に力を入れると彼の両腕は紫の炎をまとった。その猛々しい炎もデュランの紅蓮の翼の前には、とても小さく弱々しく見える。
「エリー…、エリー…」
「たかが女一人でうるせえ野郎だ!!」
ジェイナスが床を蹴る。その姿は一瞬で消えたが、一瞬で現われた。ジェイナスの紫炎の拳はデュランの片手で掴まれていた。デュランはジェイナスに目を向けると、ニタッと笑い、雄叫びを上げた。
それと同時にデュランの背中の紅蓮の炎がますます広がった。炎によって次々とカプセルが割られていく、エリーのそれを除いて。
「離せ、化け物!!」
ジェイナスが掴まれていないもう片方の腕で、デュランの顔面めがけて拳を放つ…。しかしそれは届かぬまま、逆に殴り飛ばされてしまった。一つのカプセルを残し、部屋にあった全ての天使は消滅した。
「ありがとう…」
デュランは気付くと草原の上、青空の下で仰向けにねていた。頭の辺りがふわふわして寝心地がいい、もう一眠りしたいぐらいだった、彼女の笑顔を見るまでは…
「おはよう、デュラン」
「エリー…、俺嫌な夢見てたんだ…」
エリーの膝の上でデュランは何故か涙が溢れてきた。それはとめどなく流れ続ける。
「泣かないで…、デュラン…」
「泣いてねえよ、馬鹿だな…」
震える声で話すデュランの言葉を、エリーは笑顔で聞いてくれた。風が気持ちいい、デュランとエリーのお揃いのペンダントが少し揺れた。