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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 89

その場にいた全員の心臓が冷えた。たとえ半分でもクトゥルーが目覚めない保証は無い。
淡く輝く竜の涙は、ゆっくりと暗い海の中に沈んでいく。
「うおぉぉ!」
「真!?」
我に返ったときには真が走り出していた。
彼はセドナの横を駆け抜け、柵を跳び越して海に飛び込んだ。そしてあっという間に姿が見えなくなった。


飛び込んでから数分間必死に泳ぎ続け、真は沈んでいく破片に追いついた。
こいつをなんとしても壊さなければならない。さもなければ世界が滅んでしまう。
だが今の真には手段が無い。ワルド居らず、銃も弾切れだった。
(いや、あるじゃないか。たった一つだけ方法が)
真は自分の心の内に精神を集中する。
宇宙にも似た無限大に広がる意識の海へ、精神を沈めていく。
底まで来ると全て灰色だった。空も地面も地平線も風も灰色。灰色は真の心の色だ。
その中に一つだけ真っ黒なものが存在する。
それは門だった。太い鎖で戒められた重たそうな金属の門だった。
「開けてやる。だから力を貸せ」
鎖が勝手に砕ける。そしてどこからか飛んできた漆黒の鍵が門を開けた。
漆黒の光が溢れる。それはみずからのうちに封じ込めたはずの、禁忌の力だった。
「おやおや、自分で閉じた扉を自分で開けるとはね・・・」
ゆっくりと開く扉の向こうから声が響く
「久しぶりじゃぁないですか?マイマスター?」
そう言い現れたのはカボチャ頭の青年
ただ違うのは『中の顔』が『自分』だということか
「あぁ・・・そうだな」
「ハハッ、それにしてもまた会うことになろうとは・・・」
クックック・・・と笑う
「自分の力ではどうしようも無い状態になりましたか。マイマスターながら情けない」
明らかに挑発している。だが真の表情は変わらない。真っ直ぐカボチャ頭の自分を見つめたままだ
「あぁ、情けないさ。お前に頼らなければならなくなるなんてな」
一瞬キョトンとするカボチャ頭の自分
「クックック・・・アッハッハッハ!!」
そして突然大声で笑いだした
「いやはや立派。立派になったものです。いやまったく」
そう言うとカボチャ頭の自分が真に向かい、まるで王様にするようにうやうやしく礼をする
「しかしだ、マイマスター」
「ん?」
扉に向かい歩を進める真にカボチャ頭の自分が声をかける
「今度こそ『帰って』これなくなるかもしれないよ?それでも?」
だがそれでも真の歩は止まらない
「・・・いやはや、本当に立派になられたものだ」
呆れ半分に肩をすくめるカボチャ頭の自分をよそに、闇よりも濃い闇の中に真は入って行った
「・・・では御武運を、あなたにはもう一度会いたいものです」
そう言うと最初からいなかったかのようにかき消えた

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