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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 88

「そうでもない。お前が防御膜の隙に気付いてたらどうにもなんなかったし。ただ……」
真は一度言葉を切った。そして勝者のまなざしで再び口を開いた。
「生きることをやめようとしてる奴には負ける気がしなかったよ」
「そうか……ならばその生きることをやめようとしている奴が、負けた程度の事で心を折らないこともわかるだろう?」
「え……!?」
真はユリウスの言葉の真意が分からなかった。
わからないまま突然の衝撃に弾き飛ばされ、セドナと一緒に甲板を転がった。
「いけない……!」
「どうしたんだ!?」
「竜の涙が暴走しています!!」
「なに!?」
ワルドの驚愕を嘲笑うようにユリウスの哄笑が響く。
彼の左手の宝珠が激しく輝いている。
「私の最後の魔力をくれてやろう。さぁ、目覚めよクトゥルー!!」
「いかんっ! 奴は自分の命を犠牲にしてクトゥルーを復活させるつもりだ!!」
ワルドが叫ぶように言うのを聞いて真は舌打ちした。ぬかった、さっさととどめを刺さなかったのがいけなかった。
「セドナ! なんとか制御出来ないか!?」
「だめです! 私と竜の涙の間の繋がりが弱くなり過ぎています!」
暴走しているせいだ。制御されていない力がセドナとの繋がりを断ち切ってしまったらしい。
「直接触れられれば……!」
しかしそれは不可能だ。暴走の衝撃は激しく、近付くどころか立つので精一杯だ。
「くそぅっ! どうにもならないのか!?」
「もう限界だ。マコっちゃん!」
突然の声に真たちは頭上を見る。バンカーファングを握ったアクセルが見張らし台の上にいた。
「セドナン!」
「は、はいッ」
アクセルは大声でセドナを呼び、視線を交わす。
「ごめんな……」
「……いいんです。未練はありません」
短いやり取り。だがそれだけで十分にお互いの意思は通じた。アクセルは竜の涙を壊すことを決意し、セドナはそれを承諾した。
「それに、今の私にはもっと大切なものがありますから」
「わかった。ごめんな」
アクセルはもう一度謝り、高く跳躍する。
ユリウスの真上まで跳び、バンカーファングを構える。
真上からの接近ならば、衝撃波よりも重力の方が勝る。
「うおぉぉぉっ、バンカーファングッ!!」
鋭い鞭撃が竜の涙を打った。宝玉は真っ二つに割れ、ユリウスの手から零れ落ちる。
「もういっちょっ!!」
床に転がった破片の片割れを、バンカーファングが砕いた。粉々になった竜の涙は、水色の光の粒になって飛び散る。
「もう片方は!?」
「ユリウスだ!」
ワルドの声に反応して見ると、残った破片をユリウスが引っつかんでいた。
「やらせるかよぉ!」
「ぐおぉぉっ!!」
ユリウスの背中をバンカーファングが打ち据える。いや、違う。彼は自分の背中で破片を守ったのだ。
アクセルは今度こそ破片を砕こうと腕を振り上げる。だが破片はユリウスの手から再び零れ落ち、甲板を転がっていた。海に落ちる。

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