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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 86

ページが装丁から飛び出し、宙を舞ってユリウスの周囲を取り巻く。
何かとてつもなく大きな術が来る。
「消え去れ!」
ユリウスの魔力が最大値に達する。
しかし、真もワルドも怯まない。しっかりと敵を見据え、身構えている。
この瞬間こそ、待ち望んでいた逆転の時!
(ワルド!)
(主!)
真とワルドの心はかつて無いほど通じ合っている。ダゴンを倒した時よりもだ。だからこそやる事はお互いわかっている。
「研ぎ澄まされた俺たちの牙を……」
「その身に刻むがいい!」
心が重なる。魂が共鳴する。大きな力が溢れてくる。
真もユリウスも、それぞれ持てる限りの魔力を開放する。
「ウル・ペオース・ケン・ソウェル……」
「ふんぐるい・むぐるぅなふ……」
古のルーンが、忌まわしい邪神の祝詞が、魔力に方向性を与えていく。
「イス・ニイド・アンスール!!」
「うが=なぐる・ふたぐん!」
両者共に術が完成し、魔力が物理エネルギーに変換され、艦を揺るがし始める。
「押し潰せ、猛りの水流……レイジングカレント!」
「貫け神狼の牙……ファングオブフェンリル!」
大量の水流が真たちを押し潰さんと襲い掛かってくる。その重さは計り知れず、生身の人間が喰らえば身体がバラバラになってしまうだろう。鬼児の真とてまともに喰らえば即死は免れない。
その強力な水流に灰色の閃光となったワルドが突進する。
両者の術はぶつかり合い、鬩ぎ合う。
「学ばないな小僧! 以前こうしてぶつかり合って負けたのを忘れたか!?」
ユリウスの言うとおり、真は以前まったく同じ術をぶつけ合って負けている。特に今回のユリウスは朽ちる覚悟を決めた捨て身、そのため術の威力が段違いに跳ね上がっていた。
やがて真の術が圧され始める。閃光となったワルドがだんだんと後退しだした。
しかし真はまったく焦っていない。なぜなら、術が圧し負けるのは最初からわかっていたからだ。
「学ばないのはどっちかな? 開錠!!」
「なにッ!?」
ユリウスは己の目を疑う。
最大の術を行使中の真が同時に別の術を使っている。彼は空間の裂け目を作り出し、左手の銃を押し込んだ。入れ替わりに何かを取り出す。
「使わせて貰うぜ荒!」
取り出したのは呪符。以前町のホテルに泊まった時に貰った水妖の力を封じる符だ。
真はそれに魔力を注ぎ、ユリウスの術に向かって投げる。すると符の文字が魔力光に輝き、水の勢いを殺し始めた。
水流が符によって弱体化し、真の術と拮抗する。
ユリウスは苦しげに表情を歪めた。真が叫ぶ。
「いっけぇぇぇぇっ!」
「ああああぁぁぁぁ!!」
均衡が破れて互いの術が爆散、相殺された。
嵐のような余波があちこちの物を破壊する中、真は駆けた。ユリウスとの距離が縮まり、銃を構える。
そして一発の銃声が海に響き渡った。
 

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