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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 85

「う……」
「ジャンヌ!」
カジが消えた途端、糸が切れたようにジャンヌは崩れ落ちた。シキミがとっさに支えるが、身体が透けてきている。
「無理をし過ぎてしまいましたか……ここまでのようです。教会に戻る力も……」
シキミは何も言えなかった。今のジャンヌは一秒でも早く聖結界で魔力を回復させなければならない。しかし肝心の聖結界に還るための魔力が無いのだ。どうしようもできない。
「シキミ、私の代わりにヴァチカンに報告を……」
「……待って。まだ諦めるには早いわ……オルレアンの乙女」
いつの間にか敵艦から戻ってきていた早苗が駆けつけた。
彼女はカリンを自分の下に呼んで耳打ちする。
「……わかった?」
カリンは頷く。彼女は早苗から離れると、ジャンヌとシキミの元に駆け寄った。ジャンヌの前に膝を付き、額に口付ける。
皆が目を丸くして見守る中、カリンの背後に立った早苗が呪文を詠唱する。
「――distribute」
早苗の詠唱完成と共にカリンの薄桃色の魔力がジャンヌに流れ込む。
供与の術、魔力を移動させる回復系の白魔術だ。
どうやらこの中で最も余裕のあったカリンからジャンヌへ魔力を移動させたらしい。
魔力が回復したのか、ジャンヌが存在感を増す。
「感謝します。預言者たる神の娘よ」
「神の、娘! どうりで……」
ジャンヌの発言にシキミが驚いた声を出す。荒やカリンはその意味がわからなかったが、少なくとも大変なことであるのは理解できた。
早苗は何も反応しない。
「それでは私はヴァチカンへ還ります。皆さん、いつかまたどこかで……」
ジャンヌの身体が宙に浮き、眩い光を放つ。光が消えると、ジャンヌの姿もまた消えていた。
湿った風が駆け抜ける。
レディ・セドナ号に静けさが戻る。
戦いが、終わる。


「バーニングブレス!」
「メイルシュトローム!」
ワルドの吐き出した火炎の息吹と水の竜巻がぶつかり合い、相殺した。
「だぁっ!」
銀閃が連続して弾丸を弾き出す。
弾は水の防御膜に阻まれたが、ユリウスは怯んだ。
「やっかいな膜だ」
「ボヤくなよワルドッ! 道は必ずある。膜を破ったらでっかいのブチかましてすぐに昇天させてやるぜ!」
ワルドは思わず吹き出す、真にしては下品なジョークだ。
真も戦いの最中だというのに笑みを浮かべた。
ユリウスは笑えなかった。
(なんだこいつらはッ! 一体なんなのだ!?)
真とワルドの攻撃は時間が経つにつれて激しさを増していく。それに伴ってテンションもどんどん高くなっていく。
(これは異常だ!)
まだまだ圧倒的優位に立っているにも関わらす、ユリウスの足は無意識に後退する。
(何故下がる!? 書を持つ私が、書を持たない奴に恐怖しているのか!? 馬鹿な!!)
「そんな馬鹿なことがあって堪るものか!!」
書が強く輝いた。

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