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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 83

「ふぅ・・・そろそろ本気を出したらどうだ?」
戻ってきた剣を鞘に収めジャンヌが言い放つ
「・・・・・・・」
しばらくぐったりと空を浮いていたカボチャ頭、いや先程の攻撃でカボチャは砕け黒い髪の男の顔が露出しているカジが紅い瞳を開き、ゆっくりとジャンヌを見捉えた
「あまり調子に乗るなよ・・・神に体を売った売女風情が!!」
先程とは全く口調も雰囲気も違う
ジャンヌしか知らない、カジそのものであった
「本気を出せだと? 身の程知らずにも程がある。今の君は……」
カジの姿がジャンヌの視界から掻き消える。
「力も」
正面からの打撃でジャンヌは吹き飛ぶ。
「速さも」
吹き飛ぶジャンヌの背後から声。次の瞬間、背中に衝撃を感じてまた吹き飛ばされる。
「魔力さえ、遠く及ばない」
赤い魔方陣が出現する。炎の魔術がジャンヌを襲った。
「今の君は肉体を失い、その強大な意思力で自らを縛っているだけ。実態は幽鬼よりも不確かだ」
炎の中からジャンヌが姿を現す。外傷は見当たらないが、苦しげな顔だ。
「苦しいか? そうだろうな。限られた魔力を切り崩してやっと存在を維持している上に、死者のその身ではまともな回復は望めまい?」
ジャンヌは低く唸る。まったくその通りであった。死者の身では魔力が回復しない、バチカンの奥深くの聖結界で巡礼者たちから少しずつ魔力を分けてもらって日々蓄積してはいるが、それも十分ではないのだ。
「本当に寝惚けたな。力ある正義とはこんな脆弱なのか?」
ジャンヌは黙して答えない。ただカジを見つめたまま浮いているだけだ。
「おしゃべりも無しか、つまらないな本当に。ではそろそろ……」
カジがため息を吐き、片手を上げて指を鳴らす仕草をする。
その直後、鉄色の閃光がカジの胸を貫いた。
「が……これは!」
カジの胸を貫いた鉄の刃は荒の段平だった。
「助っ人参上ってね」
アトラック・ナチャを撃破し、船の周囲に纏わり付いていた雑魚を殲滅し終えた荒が加勢してきた。
そして荒と組んで戦っていたもう一人も。
「ゴーレムッ!」
巨大な鉄の腕がカジを鷲掴みにする。カリンだ。
動けなくなったカジの鼻先に、剣を弓に番えたジャンヌが出現する。
「結束も力ですよ。貴方には永遠に理解できないでしょうけれど」
一瞬、綺麗な笑みを浮かべると弓を限界まで引き絞った
「『カルマ参式』!!」
カジがシールドを張るのとほぼ同時にジャンヌが光の矢を放つ

黒いシールドと光の矢が激しく攻めぎあい、強力な衝撃波と魔力光を産み出した

「ここまで追い込んだ事は評価しよう。だが!!」
矢の光が徐々に弱まっていく
「『力』とはこういうものだ!!」
遂にはシールドが剣を弾き返した
だが、ジャンヌに焦った様子は見受けられない。むしろ落ち着いている
「言ったはずです。『結束も力』、と」

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