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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 9

ドバンと頭から水に突っ込む。ちょうど深みだったのか、足が立たない。
いきなり叩き落とされた事もあっておれの余裕は一気に奪われた。
混乱しながら水中でバタバタもがく。そんなおれの襟首を何かが掴まえて、グイッと引っ張られた。
顔が水上に出る。岸だった。
這うようにして水から出る。飲み込んでいた水をこれでもかってくらい吐き出しながら。
「大丈夫ですか?」
繊細な手が背中を擦ってくれる。そうか、助けてくれたのはセドナちゃんだったのか。
「な、なんとか…」
噎せながら彼女の方を向く。
「!」
途端、おれは目を奪われた。
そこには一人の美しい人魚がいた。
下腹から下が青い鱗に覆われて尾ひれが現れて魚そのものだ。上半身は変わらず人間のままだけれど、今まで着ていた服はどこかに消えて胸を覆う薄布だけ。そしておれを惹きつける髪は青みがさらに濃くなって銀色からメタリックブルーに変わっている。その造形の美しさに加えて、河の水に濡れた肌や鱗や髪が爽やかな色気を醸し出していた。
「それが……君の本気の姿?」
「はい。水辺の戦いでは誰にも負けません!」
セドナちゃんは自信たっぷりに笑った。とても凛々しく頼もしい。
「んじゃ作戦通り頼むよ!」
「任せて下さい!」
彼女は河に飛び込み、物凄い速さで対岸に泳いだ。
対岸にはさっきの鎧騎士人形。どうやらおれはセドナちゃんに引かれて河を渡りきっていたようだ。
鎧騎士人形はおれ達を追って河に入っていた、2メートルはある巨体が胸まで水に浸かっていた。さすがの奴も水の抵抗と河の流れは無視できないらしく動きは鈍い。
一方、セドナちゃんはそんな抵抗など無いかのように速い。
あっという間に間合いが近付く。
接近を察知した人形が大剣を振りかぶるが、遅い。
セドナちゃんは潜水して人形の横に回り込むと、猛スピードで水面から跳び出し、尾ひれで敵をぶっ叩いた。
重そうな人形が水飛沫をあげながらすごい勢いで吹っ飛ぶ。
「すげ…」
やっぱり変身者だ。条件がガッチリと合えばかなり強い。
「まだやりますか?」
人魚の姿のまま岩に腰掛け、勝ち誇って言い放つセドナちゃん。凄惨な笑みもまた美しかった。

鎧騎士人形はまだ立とうとしている。所々へこんでいるが戦闘に支障はないようだ。
さらに森の向こうからもう一体の人形がやって来た。列車を銃撃したあの人形だ。
これはまずい。河は視界が開けているから銃が使える。あいつのマシンガンとおれの拳銃じゃ火力の差でこっちが明らかに不利だ。
それに相手は人形。疲れも怪我も無い。やはり本体の魔術師を叩くしかないようだ。
「となると、できる事は時間稼ぎか…」
適当な岩の後ろに隠れ、銃をリロードする。
そして苦しい時間は始まった。
マシンガンがセドナちゃんを狙い、銃弾をばら蒔いた。
彼女は潜水してそれを避ける。

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