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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 8

今更だ。ホントに今更なんだけど、目の前にいる子がすごく可愛い事に気付いた。
セドナちゃんは間違いなく美少女の部類に入る。眼は大きいし、肌は白いし、顔立ちはやや日本人的だけど整っている。そして何よりも髪だ。青みを帯びた銀髪はおれの心を強く惹きつける。
「ぇ、あ…その、な、なに言ってるんですか!? か、からかわないで下さい!」
時間を置いてようやくおれの言葉を認識できたのか、照れて恥じらう。
なかなか新鮮なリアクションだ。
前に片想いしてた子なんかこういうセリフを言うと、照れ隠しに殴ってくるような性格だったし。しかも鞭で。
それに比べるとセドナちゃんは可愛い。
ちょっとからかってみるのもいいかもしれない。
「からかってないよ。君みたいな可愛い娘を守るなんてすごい役得じゃないか」
「あぅ…わ、私…可愛い……ですか?」
「うん。そんなに赤くなっちゃってすごく可愛いよ」
「あ…や、やっぱりからかってるじゃないですか!!」
あ、バレた。
「真さん!」
今度は照れじゃなくて怒りで赤くなった。
堪えきれないおれは、クックッと笑いを噛み殺す。
それを見たセドナちゃんはさらに怒って、頬をむぅっと膨らます。
「意地悪です!」
最後にはそう言って拗ねてそっぽを向いてしまった。
少しからかい過ぎたかなぁ。
「ごめん、悪かった。でも可愛いのもおれが守るって言うのも本音だよ。今度はからかってない」
「………」
うわージト目で見られてるし。もしかして信用に傷ついた?
でもおかげでおれの方の照れは無くなった。またひとつセドナちゃんを知る事ができたしね。
「嘘じゃないからね」
「…正直言うとちょっと嬉しかったです」
「そっかそれは良かった」
言いながら、おれは彼女の手を取り、思いっきり引っ張ってその場を離れた。
直後、腰掛けていた木の根が粉々に砕けた。身長が2メートルはありそうな鎧の騎士が、身の丈程もある大剣を突き立てていた。
人形だ。大剣に対応する為だろう、列車を銃撃して来た奴より一回り程大きい。
騎士はデカい大剣を軽々と引き抜くと、大上段に振りかぶって打ち下ろして来た。
セドナちゃんを抱えたまま跳び、かすっただけで即死しそうな一撃を避ける。外れた大剣は大きな音を立てて地面にめり込んだ。
その隙におれ達はワルドの消えた方に走り出した。
これより作戦終了までの間生き残れるかどうか。それが最大の綱渡りだ。
森を走って広場から離れていく。おれは無意識のうちにセドナちゃんの手を引いて走っていた。
後ろから破壊音。さっきの騎士人形が障害物を薙払いながら追って来る。
「だぁー! 障害物もお構いなしかよ!」
決して期待していたわけじゃない。もともと森に入ったのは銃撃から身を守るためからだ。だけど全く効果が無いのはやっぱり残念だ。
破壊音との距離が徐々に近付いていく。追いつかれたらアウトだ。
おれは掴んだ細い手を折れそうな程強く握って必死に走った。
その甲斐あってか、やがて森が切れて沢に出た。
やった。とりあえず綱は渡りきっ……。
「危ない!」
後ろから強い力に押され、前のめりにバランスを崩す。
次の瞬間、頭の上を大剣が横薙ぎに通り過ぎる。
おれは体当たりしてきたセドナちゃんともつれ合いながら沢に落ちた。

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