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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 79

紫光がそれを飲み込んだ。
そして爆発。凄まじいエネルギーが轟音を巻き起こし、船体に大きな穴を穿った。
シルフの風に運ばれて、早苗は穴の縁に着地する。
彼女は険しい顔で穴の下を見た。異形がそこで蠢いている。
「ギギ……ご、が……」
ナイアルラトホテップはナイの姿を捨て、異形に変じていた。
少年の姿では早苗の術に耐え切れないと判断しての事だったがそれでも敗北は揺るがなかった。消滅を避けるので精一杯であった。
「バカ、な……」
闇が薄れ、ナイアルラトホテップの姿が消えて行く。逃げるつもりだ。
「シルフ!」
早苗は大急ぎで風の精霊に命じ、最速で風刃を放とうとする。しかし風刃はおろか、そよ風すら出なかった。
気が付くと、精霊たちが全て消えている。魔力切れで召喚を維持できなくなったせいだ。
早苗は手出し出来ず、ナイアルラトホテップはまんまと逃げおおせた。
「滅ぼすには至りませんでしたか……撃退できただけでもよしとしましょう」
早苗の顔から緊張が抜けていく。同時に脇腹からじわりと血が滲んだ。
闇の弾丸は防ぎきれていたように見えて実はそうではなかった。直撃は免れたものの、ダメージは深刻だった。
「黒幕は退場した……あとは貴方に任せるわ、真……」
平素の穏やかな口調で呟く。その言葉には以前とは見違える程に成長した少年への信頼で溢れていた。


少年が叫び、狼が吠える。魔術師に従って水が唸りをあげる。
「バーニングラウド!」
ワルドの吐き出した火球はユリウスに向かって真っ直ぐ翔ぶ。
「弾けろ!」
真の声に応えるように火球は爆ぜ、ショットガンのように拡散した。
ユリウスが炎に沈む。しかし
「アクアブロウ」
ユリウスの声。真はその場から飛び退いた。次の瞬間、一瞬前までいた所から水が噴き上げた。
着地と同時に甲板に身を投げ出す。着地点からも水流。
「リピート」
倒れた体勢のまま転がる真を追うように、次々と水流が噴き上げる。
詠唱省略。同じ術を連続して使用する時、詠唱をしなくても術を発動できる高等スキルだ。
「好きにはさせぬ!」
術を連発しているユリウスをワルドが襲う。
ユリウスは弾かれて術を止めたが、水の防御膜のおかげでダメージは無いようだった。
「キツいな」
ハッキリ言ってかなりの劣勢だ。互角に戦っているように見えるが水の防御膜のせいで全然ダメージを与えられない。
一方、防御策の無い真は逃げ回るしかない。どんどん体力が削られていく。秘宝の制御を奪っているセドナだって守らなきゃならないし、彼女が秘宝を抑えるのにも限界がある。
(結局、綱渡りか……)
時間は無い、しかし勝機は必ず来る。綱のように細く頼りないが道筋は見えている。
第一の綱渡りはもう始まっていた。
(渡り切るには、奴を本気にさせるしかない!)
銀閃を構え、連続で撃つ。四方八方にばら蒔かれた弾は魔術の力で方向を変え、すべてがユリウスに命中する。その隙にワルドが駆け込み、体当たりした。

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