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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 78

数は一つ、しかし桁違いの大きさだ。
「さぁ、どうする?」
ナイはなぞなぞを出す子供のように挑戦的に問う。
「こうするだけですわ……我、手中の権限を行使せん。出でよ、サラマンダー!」
早苗は目を閉じ、呪文を唱えた。彼女の周囲に赤い魔方陣が展開し炎を纏った逞しい青年、火の四大精霊・サラマンダーが現れた。
サラマンダーは背中の大剣を引き抜くと、真横に薙ぐ。
剣から生じた業火が闇の弾丸を真っ二つに斬って、ナイのところまで到達する。
「うわわっ、危ないなぁ」
ナイは闇を通じて瞬間移動し業火の斬撃を躱した。
目標を見失った闇と炎が大爆発を起こす。甲板が激しく揺れ、船体が傾いた。
ナイは笑う。この戦いは彼にとってとても愉快だった。
「っはは。楽しいなぁ、まさかウンディーネに続いてサラマンダーまで出すなんてさ。これでノームまで召喚できたら化け物だよ」
「できますわよ」
早苗は即答する。それに対してナイは笑いを消して静かになった。軽く落胆したらしい。
「あまり大口を叩かない方がいい。たたでさえ君の戦い方は許容オーバーだ」
「事実を述べたまでです。私は四大精霊全てと契約しています」
「バカな……不可能だ」
仮面に阻まれて顔は見えないが、ナイはガッカリしていた。早苗の言う事を本気ととっていない。
その態度が早苗の魂に火を点けた。
「ならば、その目で確かめなさい。全ての精霊の力を結集した私の奥義をその身に受けなさい」
紫色の魔力が彼女の身体から滲み出す。
ナイの仮面の表情が揺れた。
「私は、貴方の言う不可能などとっくに超えているのです」
真などとは桁違いの魔力が蠢動する。早苗の口が祝詞を紡ぐ。
「シルフ、ウンディーネ、サラマンダー。そして最後の一つ、出でよノーム……」
召喚に応えて精霊たちが姿を表す。
悪戯な笑みを浮かべる少女・シルフ。物静かな雰囲気の女性・ウンディーネ。鎧を纏った逞しい青年・サラマンダー。そして黒衣の老賢者・ノーム。
ここに四大精霊の全てが召喚された。
ナイの仮面が目に見えて歪む。
「バカな……バカなバカなバカな!!」
全てを嘲笑う存在である筈のナイアルラトホテップが圧倒されている。
「お前はなんだ、一体何なんだぁっ!?」
ナイの動揺を余所に、早苗は呪文を唱え続ける。
「契約者の名のもとに、すべてを超える力を我が手に……」
精霊たちが早苗の周囲を衛星のように廻り始める。
それらはやがて純粋な力へと変わり、アゾット剣に流れ込んで行く。
普通の剣なら砕けてしまうだろう。しかしアゾットは魔術師の剣、悪魔を封じる事もできる魔術兵装。
「エレメンタル・エクシード、行きます」
紫光を纏った早苗が飛翔する。
高く高く上昇し、ターン。急降下に転じて、ナイに向かって突っ込んで行く。まるで流星のように。
ナイはその光景を呆然と見つめていた。驚きのあまり思考できない。
そうして気が付いた時には、流星は躱しようもないところまで迫っていた。
「あ、あ、おあぁぁぁぁっ!!」
闇がもがく。

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