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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 77

早苗の瞳がナイを捉える。彼の表情には満面の笑みが浮かんでいた。正解、という意味だ。
異形の神々、それは旧支配者おも遥かに超える超存在。
その中でも最も高い知性を誇り、王たるアザトースに仕えながらも彼等全てをあざ笑うモノ。無貌の者、それゆえに千の顔を持つ者、這い寄る混沌、数々の呼び名を持つ邪神・ナイアルラトホテップ。それがナイの正体であった。
「ナイ、とはまたわかりやすい名を名乗ったものですわね。貴方の事を聞いた瞬間、異形の神々の介入を連想いたしました。貴方が今回の騒動を仕掛けたのでしょう?」
「正確にはカジくんといっしょなんだけどね」
ナイは訂正はしたが否定はしなかった。
「貴方が関わった事で魔術書紛失の一件も筋が通りますわ。かの這い寄る混沌が相手ではいかに結界が強力でも防ぎきれませんもの」
「そうだよ。僕が盗んで、平凡な魔術師だったユリウスとエリザにこっそりと与えたんだ。それからは実に面白かったよ。教団を設立してからはわらわらと鬼児が集まってくるし、教会の人間まで来ちゃうし、君みたいな敵も現れてくれたからね」
ナイはまるで愉快犯ような事をさも当然のように言ってのけた。だが彼の企みが世界を滅ぼしかけている事を考えると愉快犯では済まない。
「やはり彼等に自覚は……?」
「無いよ。陰から操るからこそ面白いんじゃないか」
「そうですか……決めました。貴方にはここで滅びていただきます。私は貴方が気に食わない」
ユリウス達を操って遊んでいた事を認めたナイに、早苗はアゾットを向けた。
「ふぅん、やるってわけ。言っとくけど僕はかなり強いよ」
ナイの言うことは本当だ。ナイアルラトホテップは格で言えばクトゥルーすら凌駕する。戦って勝てる相手ではない。
しかし早苗は全く引かない。
「何事も試す価値はあります」
言うや否や彼女の姿が掻き消える。
突如ナイの脇腹が裂け、そこから闇が噴き出した。
後方に風を纏った早苗が剣を振り抜いた姿勢で現れる。
「速いね。魔術書無しだというのにエリザ以上だ。そうでなくちゃ」
ナイを取り巻く闇が深くなる。顔を覆う仮面のような闇に紅い目が三つ浮かんだ。
「次は僕が行くよ!」
闇が凝集し、円錐を五つ作り出す。ナイが腕を振ると、それらは回転しながら早苗に向かって飛んで行く。
「楯を生さん!」
早苗は楯の結界を展開して闇の弾丸を受け止める。しかし結界はガラス窓が割れるような音を立ててアッサリと破られた。
弾丸が迫る。
「ウンディーネ!」
結界が破られたと見るや今度は高速で水の精霊を呼び出し、突き進む弾丸に真上から水流を浴びせた。
高密度の魔力を帯びた水にはさすがに耐え切れず、闇の弾丸らは消失した。
「まだまだぁ!」
第二波がくる。

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