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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 76

甲板の上をセドナの案内を頼りに駆ける。元々狭い甲板、戦場とは言え、人ひとり探すのはそう難しくない。
そして数分後、真たちは目的の人物に遭遇した。
「ユリウス!」
真に名を呼ばれ、ユリウスはゆっくりと振り向く。振り向いた彼の顔は頬がこけて目の下に隈が浮かび、少し見ないうちに随分やつれていた。
だがその眼光は以前と同じ。いや、むしろより狂気に犯されているように見えた。
「来たか神殺し。やはりその娘も一緒か、わざわざ殺しに行く手間が省けたぞ」
「竜の涙を返してもらうぜ!」
「お前のような未熟な魔術師が私に敵うと思っているのか。それとも何か秘策があるとでも?」
「さあな。何事もやってみなくちゃわからないよ?」
真はセドナと共にワルドから降り、構えた。セドナは祈りを捧げる時のように手を胸の前で合わせる。すると身体から青い光が滲み出し、竜の涙の力を封じた。
「やはり干渉していたのはその娘か。これでは我等の目的が果たせない」
封じられた竜の涙では儀式の確実性を欠く。復活できたとしても暴走するかもしれない。
ユリウスの狙いはクトゥルーを使役する事、暴走させては意味が無い。そのためセドナを殺すことを優先せざるを得ない状況に追い込まれた。
「死んでもらうぞ」
ユリウスは魔術書を取り出し、真たちと対峙する。
「頼むぜ、ワルド」
「うむ」
「ふんぐるい・むぐるうなふ……」
先に動いたのはユリウス。一瞬遅れて真も詠唱に入る。
「イス・アンスール・ウル……」
魔力の奔流がせめぎあう。
『うおぉぉぉぉ!!』
少年と青年の雄叫び。
真とユリウスの最後の戦いが幕を開けた。


「始まりましたか……」
離れた場所で2つの強大な魔力がぶつかり合うのを早苗は感じた。まず間違いなく真とユリウスだろう。
早苗も自分の役割を果たさなければと、気を引き締め虚空を見つめる。
「出てお出でなさい。見ているのはわかっていますわ」
一見独白。だがそれは紛れもない呼びかけ。
それに応えるように、早苗の前に闇が滲み出す。
現れたのは闇を纏う謎の少年・ナイ。だがその顔に浮かぶ醜悪な嘲笑には少年らしさは微塵も無い。
「フフ、やっぱり君が来たんだ」
「ええ、貴方のお相手は他の方には荷が勝ちすぎますもの」
「ふぅん、まるで僕の正体を知ってるみたいな物言いだね」
「知っていますもの」
早苗の発言に、ナイの笑いの質が変わった。嘲りが消えた顔は実に楽しそうだ。
「じゃあ僕が何なのか、言ってみなよ」
まるでなぞなぞを出す子供だった。完全に今の状況を楽しんでいる。この戦場も真とユリウスの決闘も、ナイは心底楽しんでいた。
「ええ、答えて差し上げます」
早苗は静かな声で自らの確信を答える。
「貴方は魔術師ではない、いえ鬼児ですらありません。貴方の正体は異形の神々の一柱、這い寄る混沌・ナイアルラトホテップ!」

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