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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 7

「んじゃフルパワーで行くぜ!」
作戦会議を終え、おれ達は早速行動に移った。
「エミル・ジュマ……」
封印解除の呪、続けてテールエッジの呪を紡ぐ。同時に一度に動かせる魔力の最大量をワルドに注ぎ込む。
「行け!」
尻尾が一閃し、列車の上にある電線を天井ごと両断した。
電力を失った列車は見る見る減速していく。
そして二分とまたずに停車した。止まるまでの間におれとセドナちゃんはワルドの背にしがみつく。
「しっかり掴まったな?」
おれ達を乗せたワルドは床を蹴り、斬撃で弱くなった天井を突き破って外に出た。
風すら追い越す勢いで走る。目指すは海の反対側、森だ。
列車から森までの僅かな距離、そこを安全に移動できるかどうかは賭けだ。
案の定、空飛ぶ人形から銃撃が浴びせられる。
ワルドは右に左に避けながら森を目指すが、しがみついているおれ達にかなりの負荷がかかる。振り落とされないようにするので精一杯だ。
銃弾がすぐ横を掠め、嫌な風切り音がする。
後ろに乗ったセドナちゃんがおれの腰に掴まる力を強める。
その縋るような仕草に、体温が上がるのを感じた。
「大丈夫、ほらもう森だ」
銃弾の嵐をかい潜り、ついに森に入る。幸いにも無傷だ。
ここなら木々に遮られて銃撃は意味をなさない。さらに森は狼の独壇場だ。
ワルドは器用に木々を避けながら森を進んでいく。
十分程走って、おれ達は立ち止まった。
「この辺りでいいだろう」
「わかった」
おれとセドナちゃんはワルドから降りた。
手筈通り、呪を紡いでワルドを中型サイズにする。
「ここに居ろ。先の様子を見て来る」
ワルドはおれ達を置いて森に消えて行った。さすがは狼、十秒もしない内に足音どころか気配すら無くなった。
「座って待っていよう」
「そうですね」
適当な木の根を見つけ並んで腰掛ける。
「予定通りですね」
「ああ、今のところはね」
油断はできない。偶然に任せた作戦だ、不測の事態が怒ったら破綻する。
「ごめんなさい」
「は?」
「同意の上とは言えこんな危険な事に巻き込んでしまって…」
「なにを今更。ここまで首を突っ込んだからには最後まで面倒見るよ」
それに巻き込まれたのは多分運命だから、受け入れて乗り越えるしかない。
「とりあえず今は君を守るよ」
開き直ったのか、決意したのか、自然とそんなことが言えた。
隣りを盗み見ると、セドナちゃんは目を丸くして驚いていた。顔が耳まで赤い。
途端にこっちまで気恥ずかしくなってきた。血が頭まで一気に回る。

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