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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 68

 
 
汽笛を鳴らし、レディ・セドナ号は離岸した。
後方の甲板に陣取った真とセドナは、並んで手すりに寄りかかり離れていく陸地を見つめる。
真は視線を横にずらし、隣のセドナを見た。彼女は新鮮な光景に子供のように目を輝かせている。元々好奇心が旺盛なようだが記憶の一部が再生不能になったことでそれに拍車がかかったみたいだ。
(やっぱり、以前とは少し違うか……)
一抹の寂しさをおぼえる。真のことは覚えているようだが、家族や集落の人のことは全く覚えていなかった。そういう意味ではナイが言ったように全くの別人だった。
しかしひとつだけ、真の事だけは覚えていた。それがどんな意味を持つのかハッキリさせたいという欲求が湧き上がる。
「どうしたんですか、変な顔してますよ?」
視線を感じたのだろう、セドナは怪訝な顔で訊いてきた。
「あ、あのさ、ひとつ訊きたいんだけど」
「はい?」
不可解な態度に可愛らしい仕草で首を傾げる。真は赤面するのを感じながら続けた。
「君はどうしておれの事だけ覚えていたの?」
なかなかずるい質問だと思う。なにせ答えが8割方察する事が出来たからだ。
「さあ、どうしてでしょう?」
セドナはおどけて答える。だが真の目が真剣な事に気付くと、すぐに顔を引き締めた。
「早苗さんから聞いて、私もいっぱい考えました。でも答えはひとつでした」
「それは?」
「今の私は《龍の涙の封印者》じゃないんです。今の私は《ただのセドナ》、1人の女の子なんです。だから……」
「待った」
真は遮った。これ以上先を言わせたらあまりにもずるい。
「わかったから、おれも覚悟を決めるよ」
「真、さん?」
「セドナ、おれは君が好きだ。君が一番大切だ。だから、君に誓うよ。おれは君のために戦うって」
真はセドナへの想いを告白した、そして自らの決意を改めて固めた。
セドナは目を丸くして驚いたかと思うと、すぐに顔を伏せて泣き出した。突然の事に、真はオロオロする。
「真さん、いいえ真。私も真が大好きです。一人の女の子として好きだから、だから私は……あなたの事だけは忘れなかった……!」
「……うん」
真は頭の中が真っ白だった。だからだろうか、自然にセドナを抱き締める事が出来た。
いつの間にか日は傾き、夕日が2人を照らしている。明るいようで暗いその中で、2人の影が重なり合った。
 
「…………」
そんな二人を覗き見ている人が一人、デバガメ魔術師アクセルである
「青春だね〜。青い春と書いて『青春』だね〜」
実年齢は真と差して変わらないはずなのだが…
「良いじゃん」
ナレーションにツッこまないでください
「はいはい、でもな〜…」
そう言うと少しだけ目を細める
「『任務』…かね」
いつの間にか後ろに立っていたシキミが呟いた
「あ、シキミンもデバガメ?」
「阿呆、そんな趣味はないわ」
「あ〜…シキミンとっくに枯れてるもんね〜」
そんなアクセルの脳天にカカトが落とされた

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