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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 63

「おいおい、大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ、それに他に方法がないし」
相手が海路を使っている以上、こちらは空路を行くしか先回りする方法は無い。だが空港に戻っている時間など無い。故に人魚の里同士を繋ぐ空路を使うのが一番良いというわけだ。
「仕方ねぇ、腹括るぜ」
「早速、準備に取り掛かりましょう」
「格納庫の鍵は村だ、だから先に村を抑えねば」
「では私とカリンが参ります。今なら村も手薄でしょう」
言って早苗は部屋を出て行った。彼女たちなら数時間もすれば村を制圧できるだろう。
「た、大変です!」
早苗と入れ替わりに慌てた様子のアルバが部屋に飛び込んできた。
「セドナがセドナが……!」
「セドナがどうかしたのか!?」
一番早く喰い付いたのは真だった。場のテンションが一気に上昇し混乱する。
「落ち着けって」
荒がいつの間にか取り出した段平の柄で真を黙らせた。
「それでセドナ嬢ちゃんがどうしたって?」
「それが目は覚めたんですけど、記憶が……」
「やはり、そうか……」
アルバの報告を聞いてトリトンは深くため息を吐いた。
 
 
「だれ……?」
部屋に入ってきたトリトンを見るなり、セドナは怯えて縮こまった。彼女は付き添いの澪やトリトンの一緒に入ってきたアルバにも怯えた目を向けた。
どうやら彼女は彼等が誰だかわかっていないらしい。
「おじさまぁ。これは一体……」
澪は涙目だった。ショックが大きいのだろう。
「あ!」
トリトンが口を開きかけた時、セドナが声を上げた。
「真さんだぁ〜!」
「え、どわぁ!!」
いきなりセドナに飛び掛かられて、真はひっくり返った。仰向けに転がった彼にセドナが圧し掛かり、胸に頬擦りする。
「……ふ〜、ラブラブで羨ましいかぎりだな」
タバコの煙を吐きながら荒は真を見下ろす。冷ややかに見下ろしている。澪とアルバも同様だった。
「あ、あの〜」
「やはりこうなったか」
「ワルド!」
「長よ、これはおそらく……」
「ああ、存在喪失による記憶の欠落だろう」
「存在の喪失? 竜の涙を失った事と関係が?」
「おそらく……そうだろう長よ?」
ワルドはトリトンに説明を求める視線を送った。セドナに竜の涙を封じたのは彼だ、何が起こっているのか誰よりも把握しているはず。
トリトンは苦虫を噛み潰したような顔で説明する。
「竜の涙は生まれた直後にセドナと融合させました。あれは今や娘の半身、それを失った事で記憶の一部が再生できなくなっているんでしょう」
「医者に見せてもダメなのか」
「ひさしぶりに馬鹿を言ったな主。セドナの脳に異常は無いのだ、医者が治せるものではない」

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