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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 61

「まだだ!」
今度は天虹、表面の魔術文字が赤く輝く。銃口が火を吹き、壁に追い詰められたユリウスを焼いた。
「はぁ、はぁ。やったか?」
荒い息を吐き、踊る炎を見つめる。すべて効いているなら立ち上がれるはずはない。しかし……。
「もう終わりか」
炎の中からユリウスが悠然と歩み出てきた。かすり傷一つ無い。
「残念だったな。その程度では、水の防御膜は破れん」
「絶対、防御……」
真は呻いた。ワルドがいない今の状態ではとても破れそうに無い。せいぜいソーマの効果で詠唱を阻止することしか出来ない。
「さてと、お遊びもここまでにしとこう」
ナイは言って、また指を鳴らす。その瞬間、真と早苗は眩暈を覚えた。気が付くと魔方陣は消え、竜の涙も綺麗さっぱり無くなった。壁際には先ほどの戦いで巻き添えをくった信者たちの死体の山が現れている。
「これは……!?」
「見ての通りさ。儀式の場所はここじゃないし、竜の涙も無い。君等が見ていたのはただの幻」
「まさか、催眠結界!」
ナイの口ぶりに早苗が気付いた。ナイは悪戯が成功した子供そのものの表情で頷く。
部屋に入る際のおかしな感覚こそ、催眠に入った瞬間だったのだ。
「おかげでいい時間稼ぎになった。行くぞナイ」
「オーケー」
ナイの身体から闇が噴き出し、ユリウスと彼の身体を包み込んだ。数秒の後、闇が消え去ると2人の姿は消えていた。
「また逃げられた!」
「追いかけましょう」
早苗はシルフに風を吹かせ、どこかに通路がないかと探した。やがて祭壇の後ろに不自然な流れを探り出す。
「こっちですわ」
 
通路の先は広い隠し港だった。洞窟の広い出口が海底に侵食され、そのまま港のようになっている。
真と早苗は洞窟の外、沖合いの方に大きな船の姿を見つけた。
「やられたな」
「ええ」
おそらく、ユリウスとナイは船の中だろう。止めようにももう離れ過ぎている。
「どうする?」
「一旦戻りましょう、行き先は知れています。おそらく太平洋……」
早苗は踵を返す。真も後を追って戻った。
祭壇のあった部屋に戻ると残ったメンバーが待ち受けていた。
「ユリウスは?」
真は首を横に振る。すると荒はやっぱりかとでも言いたそうにため息を吐いた。
「アトラック・ナチャが消えたからまさかとは思ったんだが、まんまとやられたな」
「まー、ぐちぐち言っても仕方無いだろ」
「……そうね」
アクセルがフォローを入れ、早苗は皆の前に進み出た。
「戻って態勢を立て直すわ……」
「んじゃ俺は別行動ってことで」
「えっ、なんでだよアクセル!?」
「前回の襲撃に参加した俺が人魚さん方に会う訳いかないっしょ?」

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