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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 55

「ハッキリ言って僕らは竜の涙にしか興味は無い。それを取り出したら入れ物は不要さ」
真はギリッと歯を鳴らす。またセドナを物扱いされたことへの激しい怒りの表れだった。
「取り出す、だと?」
比較的冷静なワルドが問う。ナイはその問いを待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。
「黙って見てるがいいさ。もうすぐ彼女は竜の涙から開放される。もっとも、存在の半分を失うから、以前とは人が変わっちゃうけど」
言ってナイはパチンと指を鳴らす。すると黒い霧のような闇が虚空から滲み出し、その中からセドナが現れた。
彼女は意識が無いのか、無抵抗のまま祭壇の上の台に寝かされる。
「それじゃあ、彼らの相手を頼むよ」
「元よりそのつもりだ」
真たちとナイのちょうど中間、ホールの真ん中にいた狂信者の一人が立ち上がる。ユリウスだった。
彼が手を振ると、信者達は左右に分かれてスペースを空けた。
真たちはホールの真ん中に進み出てユリウスと対峙する。
「エリザの仇を討たせてもらうぞ、神殺し」
「え!?」
ユリウスの発言に真は驚いた。ダゴン戦のドサクサでエリザの行方はわかっていなかったがまさか死んでいるとは思ってなかったのだ。
「ダゴンを倒したくらいでいい気になるな。私があれより弱い道理は無いぞ」
ユリウスの魔力が開放される。
疑問は残るが真は目の前の敵に集中することにした。迷いを抱えたまま勝てる相手じゃない。
「セドナ嬢を助けるには、あいつをぶっ潰すしかなさ……どわっ!」
取り出した段平を横様からの攻撃に弾き飛ばされて、荒は言葉を切った。
「貴様の相手はこっちだ」
狂信者の中から一人出てきた青年が言う。彼がやせた腕を突き出すと、手首に巻きつくように魔術文字が現れ、手のひらに光が生まれた。
「ウィルバー・ソロン。信者がどれだけ死んでも構わん。存分にやれ」
ウィルバーと呼ばれた青年は頷く。
荒が段平をまた取り出しつつ言った。
「黒魔術師か。どれ、お手並み拝見させてもらおうか」
「それはこちらの台詞だ」
荒とウィルバーは互いに構え、臨戦態勢に入った。
「ロード……」
ウィルバーが装填を意味する呪文を呟くと、手の中の光が球状になり、自らの破壊力を示すかのように回転を始めた。
「ファイア!」
発射の呪文ととも光球は弾丸のように飛んだ。
荒は光弾の軌跡を見切って無理の無い動作で避ける。
「ロード!」
ウィルバーは荒に接近しながら手を前に突き出し、光弾を装填した。
「ショット! ファイア!」
散弾、発射。
高速で迫る光弾は荒のそばで拡散し、逃げ場を塞ぐ。避けきれないと判断した荒は段平で光弾を斬り捨て、あるいは弾いた。躱しそこなった弾が身体を掠める。
「速いな」

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