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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 52

「愚かですわ、その程度の意思で私に弓を引くなんて。少々、きついお灸が必要かしら?」
「嫌い嫌い嫌いーーーっ!」
泣き声とともに、膨大な魔力が動く。周囲の土が集まって小山を作る。そのままゴーレムを組み上げるのかと思いきや、土は乾いて細かい砂になった。
錬金術、金属を変質させる専門的な魔術体系だ。
「冷静さを失ってなおこの要領、どこかのへたれにも見習わせたいですわね」
どこかで、そのへたれの魔獣使いが大きなくしゃみをした。
砂の塊が盛り上がり、蠢く砂山となる。そこに腕と手が生え、目と口らしき三つの穴ができた。サンドゴーレムの完成だった。
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
絶叫とともにサンドゴーレムに意思が宿り、早苗を襲った。砂が流動し、槍となって迫る。それだけではない、土よりもさらに重たい砂の腕が振り下ろされる。
腕を避け、槍は風の衣で防御する。しかし防御を突き抜けた槍が早苗のわき腹を浅く裂いた。風の衣の防御が利いていない。恐らく相手が地属性の砂だからだろう。
頭に血が上っても属性を念頭に入れている。確かにカリンは天才だった。
槍に傷つけられながらも軽傷に止めた早苗は、サンドゴーレムに風刃を放った。しかし切った箇所の砂が散るだけで大して効いていない。
再び襲い来る腕を掻い潜り、早苗は飛んだ。槍も腕も届かない間合いの外まで高度を上げる。
一呼吸置き、サンドゴーレムの全体像を観察する。
「壊れちゃえぇぇっ!」
カリンが絶叫する。サンドゴーレムが大口を開けて、早苗の方に向いた。口らしき穴の前に黄色い光の術式が浮かぶ。そこに魔力が集中し、黄色い光線が放たれた。
「っ! 我が領域を守る楯を成せ!」
早苗は高速で楯の結界を作り出して光線を受け止める。あまりのエネルギー量に、結界が軋んだ。
なんとか防ぎきったものの、相手はまだ健在、それもこちらが圧されている。状況は悪い。
(シルフでは倒せませんか……)
ならば別の手を使うまで。そう決めた早苗は早速動いた。速度を上げて高度を急激に落とし、サンドゴーレムに向かって行く。砂の腕を掻い潜り、肉薄する。
「シルフ」
空気圧の衝撃波が至近距離で炸裂し、サンドゴーレムをバラバラに散らした。
それでは砂を散らすだけで効果が無い、せいぜい動きを封じる程度。だが早苗の狙いはそれでよかった。
早苗は後方に飛び距離を空ける。そして地上に降り立ち、シルフを送還した。目を閉じて精神集中する。
「天の裁定此処に下りて……」
それはシルフを召喚した時と同じ祝詞。だが続きが違う。
「我従えるは水の精霊。其の力、水の槍となりて我が敵を貫かん!」
アゾット剣から零れた紫の光の粒が蒼い光の魔方陣となる。光は像を成し、穏やかな顔をした女性が現れた。

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