PiPi's World 投稿小説

Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 49
 51
の最後へ

Beast Master“真” 51

彼に見えないところで早苗がため息を吐く。
「あのカリンという娘は恐らく、先日戦った人形遣いの男の娘だ。そしてあの人形の下半身からはその男の匂いがする!」
先日の人形遣い、クライドがアーニーと呼んだ男のことだった。
「そうだよ、狼さん。カリンはね、パパの身体返してほしいの。食べちゃったでしょ?」
「本当なのか?」
あの時、真はワルドとは別行動を取っていてアーニーが倒れるところを見ていない。知っているとすればワルドだけだった。
「そうだ。あの時、油断していた奴の上半身をばっくり丸呑みにした」
「狼さんが食べちゃったからパパ動かないの。カリンは一人ぼっち嫌。だから、だから……」
カリンの語気が乱れ、狂気を孕む。クマのぬいぐるみの目が光り、凄まじい魔力が少女の体から発せられた。
「パパを、パパを返せぇぇっ!!」
魔力が衝撃となって迸る。すると地面の土が次々と盛り上がり、土人形の軍勢となった。
「ゴーレムか!」
荒が瞬時にその正体を看破した。
「死んじゃえーーっ!」
カリンの悲鳴にも似た指令で、ゴーレムたちは一斉に襲い掛かってきた。
土塊の重たい拳を真は間一髪で避ける。それた拳は地面を穿ち、爆散させた。
「シルフ」
早苗が風刃を発生させて、真を襲ったゴーレムを切り刻む。ゴーレムは力尽きて土に還った。
後方では荒もゴーレムを刻み倒していた。
「細切れにすれば動かなくなるみたいだな」
「よし、ワルド!」
「うむ」
真とワルドもテイルエッジでゴーレムを倒していく。しかし……。
「うわぁぁん!」
カリンの泣き声とともに再びゴーレムが現れた。数が増える。
「拙いな真、増えるペースのほうが速い! ジリ貧になりかねないぞ」
「ああ。あの子、強い……!」
「父をはるかに凌駕する才能だな」
真の言葉にワルドは頷く。
「そうだな。だけど天才ならこっちにもいる。早苗!」
「貴方に命令されるとは思いませんでしたわ」
そう言いつつも、早苗はシルフに指示を送った。
シルフが両手を高く揚げ、天を仰ぐ。歌うような呟きがその口から漏れた次の瞬間、豪風が巻き起こりゴーレムを一体残らず粉みじんに砕いた。
「時間がありません。ここは私が食い止めます。貴方がたは先へ」
「わかった」
真は頷き、砦の中に駆け出す。荒とワルドもそれに続いた。
もちろん、カリンはそれを黙って見過ごすことはない。すぐにゴーレムを作り出し、真たちの前に配置する。だがそれを、一陣の風が砕いた。
「貴方の相手は私ですわ」
風の衣を纏った早苗がカリンの前に降り立つ。その間に、真たちの姿は砦の中に消えた。
「いじわるなお姉ちゃん……嫌い!!」
カリンの目に敵意が宿る。
早苗は目の前の少女が目的を忘れ、ただ暴れることに集中していることに気づいた。つまり手段と目的が逆転してしまっている。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す