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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 46

陣の中は早苗の陣地。侵した者は陣の力に曝される。結界と呼ばれる魔術だ。
ダゴンは自重に耐え切れず海岸に蹲った。
今までは普通に立てたのに、何故急にそうなったのか。それは陣の中の重力が増しているからだ。それがこの結界の力だった。
岩にめり込むほどの凄まじい過重に、ダゴンの身体の骨がボキボキと音を立てて折れていく。
「大分弱ってきたな」
「あとちょっと〜」
「最後は真君が決めたらどうかなぁ」
「ああ」
ダゴンを真に任せ、陸たちは残った深きものどもの始末にかかる。
真はワルドの背から降りた。
「ワルド。もう一度アレいくぞ」
「うむ」
先ほどのアクセル戦で使った真の奥義とも言える術。術のバリエーションの少ない真が持てる最大の術。ダゴンに止めを刺すにはあれしかない。
真は目を閉じて詠唱を始めた。そして不思議な現象を体験した。
まわりの音がまるで耳に入ってこない。けれど不思議な事に、自分の前で構えているワルドの息遣いだけは聞こえる。そしてワルドの考えてる事が手に取るように分かる。
(これが、パートナーと繋がるという事なのか?)
魔力がワルドに伝わっていくのが分かる。それをより効率良く、より強く循環させる。今まで意識的にやってきた事が自然にできた。
今までに無い完璧な術構築ができた。あとは最大の力を持って炸裂させるのみ。
最後に、目を開いてダゴンを見据えた。
「行け! ファングオブフェンリル!」
真の叫びとともに、ワルドの身体が灰色に輝き、彼の身体は光の狼となった。弾丸よりも迅く疾走し、蹲るダゴンに激突する。そして光は、ダゴンをいとも簡単に貫いた。
着地するワルド。そして天を仰いで、一際大きな遠吠えを発した。
「ウウゥオオオォォォ!!」
瞬間、ダゴンに残ったエネルギーが爆発した。
轟音と爆風が岩浜にあるものを薙ぎ払った。
「くっ・・・ダゴンが・・・」
浜辺から離れた崖に降り立ったエリザが苦々しく呟く
「・・・」
その時後ろから聞きなれた声が聞こえた
「なに?引き上げろっていうの?」
実際引く気がないエリザが怒りながら『それ』から目を反らし真達のいる浜辺を睨みつけた
「・・・」
それでもなお話し掛けてくる
「うるさい!!私に喧嘩売るっていう・・・」
瞬間、エリザの体を何かが切り裂いた
「な・・・に・・・」
深手を負ったエリザの目にあるものが映る
「まさかあんたバチカンの・・・」
そう言いながら崖から落ちるエリザに『それ』は嘲笑を向け去って言った

「終わった、のか……?」
岩浜に立ち尽くす真。今度こそ魔力を使い果たし、目は虚ろで足元はおぼつかない。ぐらりと身体が傾ぐ。
後ろ向きに倒れた彼を受け止めたのはワルドの大きな背中だった。
「ご苦労だった。我が主よ」
真は既に気を失っていた。今は幸せそうな顔で眠っている。
「しばしの間休むとしよう」
そう言ったワルドの目は、森の王者たる狼とは思えないほど優しかった。

暖かい活力に満たされ、身体が軽くなる感覚に真は目を覚ました。
ゆっくりと瞼を開ける。見えてきたのは青く光る岩の天井。
「目が……覚めた?」
少女の静かな声。首を動かしてそちらを見ると早苗が居た。彼女は椅子に座ってベッドの上の真に手をかざしている。よく見ると手のひらが薄く発光していた、白魔術だ。
身を起こす。痛みはどこにも無く、魔力も八割以上回復していた。
「おれは一体?」
「ダゴンを斃してすぐに倒れて……今まで眠っていたの」
そう聞くや、真は慌てた様子でベッドから飛び起きようとした。
「くそっ、すぐにセドナを追わないと!」
「落ち着いて……闇雲に飛び出しても意味が無い。第一、そのセドナがどこに連れて行かれたのか……貴方はわかっている?」
「それは……」
早苗の冷静な意見に返す言葉が無い。一旦、ベッドに座りなおして息を整える。
「事情は聞いてる……まずはトリトンに【海の涙】について訊くべき時」
なぜセドナが【海の涙】なのか、そこは知っておくべきだった。そうすれば敵の動きもわかるかもしれない。早苗はそう考えていた。
彼女の頭のキレを知っている真は頷いた。セドナが攫われたことを考えると、トリトンを一発殴っておきたかった。

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