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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 44

「サンキュ、んじゃ任せた。行くぞワルド、荒!」
早苗に礼を言って真は陸とマリオンのもとに走った。気絶していた2人は状況を把握しきれていなかったため手短に説明してやる。
「空の女はあの姉ちゃんに任せるとしてだ。ダゴンはどうする? でかい上にかなり頑丈そうだぞ?」
「アレに潰されたらアウトだねぇ。深きものどもも邪魔するしさ〜」
「うんうん」
「わからない、けれど闘るしかない。みんな力を貸してくれ!」
作戦も何も無い、でも負ける気はしていない。真はそんな気持ちを仲間に伝えようと声に出して叫んだ。
そしてそれはちゃんと伝わった。ワルドは勿論、荒も陸もマリオンも頷く。
「行くぞ!」
真はワルドに跨って駆けていく。仲間達はそれぞれの武器を構えて彼を追った。

高空で向かい合う2つの黒い影。
1つはエリザ、黒いローブの裾とこげ茶色の髪が暴風に踊っている。
もう1つは早苗、黒い着物の袖と腰まで伸ばした美しい黒髪がそよ風で躍動している。
「アンタ、何者?」
鋭い眼光で睨みながらエリザが問う。早苗は眼光を軽く受け流してあざ笑った。
「まあ、失礼なお方。人に名前を尋ねるときはまず御自分から名乗るのが礼儀ではなくて?」
「……そうね。私はラムレイ教団ナンバー2、エリザベート・A・ダーレスよ」
早苗の挑発への憤りを荒い鼻息を吐いて抑え、エリザは答えた。
「私はマーリンの一番弟子、秋田早苗と申します。本日は貴女様のお相手を勤めさせていただきますわ」
空中で深々とお辞儀をする。とても器用な芸当だ。
「マーリンの弟子……、なるほど相手にとって不足は無いわね!」
エリザは風刃を放った。だが先ほど荒を嬲っていたのとは桁違いの威力のものだ。
だが早苗は微動だにせず、正面からそれを無効化した。
「なるほど、やっぱりこれは効かないのね。なら、やり方を変えるまでよ!」
エリザは短く呪文を唱え、空間の裂け目を出現させた。左手を突っ込み、中から大量のナイフを取り出す。
「いあ! いあ! はすたぁ!」
禁忌の呪を唱え、書を起動させる。風を纏ったナイフが放たれた。
早苗は横にスライドして攻撃の軌道から離脱するが、ナイフは風を受けて方向を変える。真の銃と同じだ。
ナイフが早苗の風の衣に触れる。ただのナイフなら弾き飛ばされるだろう。しかしこれは違った。纏わりつく風が早苗の衣を相殺し、貫通した。
だが早苗の対応も速い。ナイフが方向を変えたのを見るや、エリザと同じように呪文を唱えて武器を取り出していた。
連続する金属音、弾かれたナイフがバラバラと落ちる。
「いいもの持ってるじゃない」
エリザの視線は早苗の持つ短剣に向かっていた。
アゾット剣、かの高名な錬金術師・パラケルススが愛用した短剣の魔具だ。
「お褒めにあずかり光栄ですわ。では今度はこちらから行かせて頂きます。おいでなさい……」
呼びかけに応えるように緑の光が像を結び少女をかたどる。この少女こそ四大精霊の一つ、風精霊シルフだった。
「汝、空圧の拳!」
早苗の指令にシルフの手がが動く。次の瞬間、エリザは物凄い勢いで真後ろに吹っ飛ばされた。
空気の圧力を利用した衝撃波を受けた事に、吹っ飛びながら気付いた。書を起動させて空中姿勢をなんとか立て直す。だが再び見た先に早苗の姿は無い。
影が差す。殺気に反応して身を躱した直後、アゾット剣が頬を浅く裂いた。
更に斬撃は続く。エリザはナイフでそれを弾き、後方に飛んで間合いを空けた。
「いあ! いあ……」
ナイフを再び取り出し、呪文を紡ぐ。
「はすたぁ!」
風を纏ってナイフが飛ぶ。
早苗は逃げるように下に飛んだ。ナイフが一斉にそれを追いかける。向かう先には暴れるダゴン。
早苗はくるりとダゴンの周りを旋回する。ナイフもそれを追おうとするが、暴れるダゴンの身体が間に入り、それを遮った。ナイフはそのままダゴンの身体に突き刺さる。
「まあ、同士討ちですか?」
「くっ!」
エリザも高度を落とし、早苗を追った。

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