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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 5

「日本に…?」
「まあ、ちょっと複雑な事情があってね」
おれは簡単に説明した。
おれは敵対してる鬼児達にさらわれた仲間を助ける為の修行をしにこの国に来て、ワルドと出会った。
けれど帰るぞという時、問題が起きた。
ワルドだ。ワルドはただのペットじゃなくて狼。国外に連れ出せるわけが無い。だからおれだけ置き去りにされて違法な出国手段を探すはめになったんだ。
そして帰国の期日まであまり余裕が無い。ワルドが断るのも無理がなかった。
セドナちゃんは黙って何かを考える仕草をする。
「じゃあ、解決の暁にはあなた方に帰国の手段を提供するのではどうでしょう?」
「なに! 手段があると言うのか?」
ワルドがまた睨む。
全然怖くない。飯食いながら、尻尾パタパタ振ってたんじゃなぁ…。
「なぜ私がこんなに日本語が上手いか分かります?」
「さあ?」
「それは私たち一族の集落で最も大きなものがあるのが日本だからです」
あー、そういや日本にも人魚の伝説が有ったな。八百比丘尼とか。
「なるほど。つまりその集落同士を行き来する航路があるというわけか…」
「その通りです。どうです、引き受けて下さいますか?」
答えなんて最初から決まってる。
「まったく。顔に似合わず交渉上手なんだね」
そしておれ達は、依頼を引き受けた。
そんな訳でおれ達は列車に乗っている。

「ワルド」
「なんだ?」
「おれってさ、女の子に出会う度にヤバい方に流されるような気がすんだけど…」
セドナちゃんだって関わり合いを持ったらコレだしなぁ。
「そうかもしれん」
「そうなんですか?」
「我が聞いた範囲では、三回以上死にかけた上に失恋までしている」
「なっ!」
「へぇ、失恋ですか。少し気になりますねぇ〜」
セドナちゃんが色恋の部分にかなり敏感に反応する。激しく嫌な予感がするんだけど…。
「詳しく聞かせてください!」
やっぱそうきたか!
「想い人を親友に取られたらしい」
覚えてろ、ワルド!!

結局、おれは失恋話を洗いざらいしゃべらされた。

列車の旅は問題無く進んだ。
二日かけて何度か列車を乗り継ぎ、途中のターミナル駅では食事や買い物をした。
その間にセドナちゃんの人物像が見えてきた。
口調は丁寧で柔らかいけど天衣無縫。聞きたい事は聞いてくるし、言いたい事は言ってくる性格だった。
失恋話を聞かれた時は参ったけど、それ以外の場合ではその素直さが心地良かった。

「もうすぐ着きますよ」
最後の列車に乗って二時間、ようやく目的地が近付いたらしい。
ここまでの旅は順調。逆に不安になるほど静かな旅だった。
窓の外は草原と森。完璧、田舎だ。
特有の清涼な空気が窓から流れ込んでくる。
ワルドはセドナちゃんの膝の上で丸くなっている。うらやましいヤツめ。
潮のにおいがしたと思ったら、海岸線沿いに入っていた。
海の向こうに水平線。光る水面。そして空を飛ぶ人影。……人?
「なぁワルド。人が飛んでるんだけど」
「パラソルひろげた乳母か? それとも車に乗った眼鏡と赤毛か?」
いや、いくらイギリスだからってそれはないだろ。つーか、なんで狼がハ〇ポタなんて知ってるんだよ!?
「あれは……鎧?」
セドナちゃんが窓から身を乗り出す。
「鎧…ですねぇ」
影はフルアーマーの鎧姿をしていて背には翼があった。

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