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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 40

「嘘だ…!」
「嘘じゃないさ、疑うなら奥で転がってる長に聞くと良い」
ナイは笑みを歪めた。真達の驚く顔を心底楽しんでいる。
「そうとわかって、ますますセドナを返してもらわねばならなくなったな」
ワルドは構え、牙を剥いた。
その様子を見たナイの周囲の闇が濃くなる。
「やる気満々だね。でも今は遠慮させてもらうよ。早く帰らないとユリウスに怒られる」
闇がナイとセドナを包んで収束していく。
「待てっ!」
《バイバイ、魔獣使いさん。近いうちにまた会おう》
最後にナイがそう言って、真達が止める間も無く二人の姿は消えていった。

「!」
「ん?」
陸と戦っていたアクセルが突然動きを止めた。異変に気付き、陸も攻撃の手を止める。
「チッ! 撤退か……」
いつ来たのかは知らないが頭に響いたナイの声は竜の涙を確保したと言っていた。目的が無い以上ここで戦う意味も無い。
「おい客人っ! 退くぞ!」
「仕方が無いですネ、勝負はあずけるアル」
「逃げるつもりかな〜?」
「勘違いすんな。今は退くがテメェは絶対殺す」
そういい残し、アクセルと伯白は撤退していった。
「なんだ? いきなり……」
「さぁ?」
その場にはポカンとした荒と陸だけが取り残された。彼等にはナイの声が聞こえていなかったので事情がわからないのだ。
「りく〜この人どうするぅ?」
奥から現れたのはマリオンだ。後ろ手にアルバを引き摺っている。扱い方がぞんざいなのは気のせいだろう。
「真くんに聞こうか。ほら、来たみたいだし」
陸の言うとおり、奥の方から誰かが走る足音が聞こえてきた。あまり待たないうちに真が姿を現す。
しかしなんだか様子がおかしい。酷く切羽詰って見えた。
「おい、どうかしたのかっ!?」
真は答えず、無視してそのまま走り去った。
少し遅れてワルドが姿を現す。
「ワルド、なにかあったのか!?」
「セドナが攫われた!」
ワルドもそれだけ言って走り去る。
ただ事ではないと感じた荒たちも後を追った。

岩浜で待機していたユリウスとエリザの前に闇が滲み出た。それは人の形を形成し、娘を抱きかかえたナイが現れた。
「ご苦労だった」
「ちょろいよ」
労いを嘲笑で返すナイ。態度の悪さにエリザの眉がつり上がった。
「それが例の物か?」ユリウスは気絶しているセドナの顔を覗き込んだ。
「うん、驚いたよ。まさかこんな偽装を施していたとはね」
「な…。じゃあその娘が?」
「竜の涙さ」
「私、何度も会ってるじゃない!」
なのに今まで気付かなかった。悔しすぎてエリザは自己嫌悪に陥った。八つ当たりされるのはもちろん、深きものどもである。
そうこうするうちにアクセルと伯白が戻って来た。
「エリ姐ただいま…ってなんじゃこりゃ!」スプラッタな惨状にアクセルが引く。
「いつものヒステリー中みたいアルネ」
「うるさい!」
余計な一言を言った伯白が風で真っ二つになった。後方でユリウスとナイがやれやれと溜め息を吐く。
「遊びはそこまでだ。竜の涙がこれでは作業が一つ増える。無駄な時間は省きたい」
「とっとと帰るよ」
ユリウスとナイが先に立って歩き出す。アクセルと伯白、不機嫌なエリザ、そして深きものどもが続く。
「待て!」
背後からの叫びに軍勢は歩みを止める。
振り向くと岩浜には真がいた。

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