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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 39

「・・・!!」
しばらく考えた後お金を渡した人物を思い出した
「陸!!」
「だーいせーかーい」
そう言うと人の形に戻る
「いくら計算しても時給換算で焙れる小銭を届けに来た。どうにも時給以外のお金を持ってると落ち着かなくて」
「あ・・・そういうものなんだ」
「それはそうと、急いでるんじゃないの?」
陸の言葉にハッとする真
「そうだ!!」
真の様子に少しだけ考える陸
「・・・じゃあここは俺に任せて急いだら?」
「でもお金が・・・」
「いい、いらない。」
そう言い屈託のない笑顔を浮かべた
「『殺し』は趣味だから。それに・・・」
ヨロヨロと胸を押さえながら苦しそうに立ち上がるアクセルを見る
「なかなか死なない相手と戦ってみたかったから」
無邪気な笑みを浮かべる
「・・・わかった。ワルド、澪、行こう」
「・・・わかった。主」
少しだけふらつく足で澪とともに洞窟の奥に向かった
真の背中が見えなくなった頃
「お前・・・何をした・・・」
両断されても死なない筈のアクセルが苦しそうに呟いた
「ん?ただ内臓を『凍らせた』だけの話。心臓とか血管とか」
愉しそうに話す陸
「斬っても死なないらしいけど内臓直接凍らせても死なないのかなぁ」
そう言い、ニィッと無邪気なそれでいて凄惨な笑みを浮かべた

真は急いだ。
青黒い洞窟の中を、水を跳ね上げながら、澪が遅れだしたのにも構わず走った。
なんだか嫌な予感がした。今までいくつもの修羅場を経験した、真が経験した事の無い不安。自分の足元がグラグラ揺れる異様な感覚。
(いったいなんなんだよ!?)
疲労ももう気にならない。大きな不安が身体を突き動かす。真たちはやがて里人たちが寄宿していた広間に辿り着いた。
「ぬぅ、これは……!」
強い血の匂いにワルドが顔をしかめて唸る。
広間は酷い状態だった。男も女も子供も多くが倒れ、多くが死んでいる。いつかの、列車の中の惨状が思い出された。
「セドナ!」
真は広間の奥の方にセドナの姿を見つけた。
彼女は見たことも無い、12,3歳くらいの少年に抱きかかえられていた。気を失っているようだ。
少年は真っ黒い霧のような闇を纏っていた。それは恐ろしく邪悪で恐ろしく醜悪な光景だった。
「お前!」
真は直感で目の前の少年が敵であることを悟った。
「君が噂の魔獣使いか。なるほど、なかなかの才能じゃないか。クライドがやられるわけだ」
少年はまるで品定めするように真を頭から足先まで観察した。
神経を鷲掴みにされたような不快感が真を襲う。
「貴様、何者だ!?」
満足に口も動かせない真の代わりにワルドが問う。彼の鼻をもってしても少年の正体が解らないらしい。
「申し遅れたね。僕はナイ。ラムレイ教団のナンバー3さ」
「ラムレイ教団…それが貴様らの組織の名か。目的はやはりクトゥルー復活か?」
「ああ、そうさ」
ナイは頷き、ニヤリと笑った。見た目は無邪気な少年の笑顔だが、その内に吐き気をもよおすような醜悪さを含んでいる。真を含め、その場に居た誰もが圧倒された。
「水神クタアトを使えばクトゥルーを召喚・使役できる。ヤツの力なら世界を生かすも滅ぼすも思いのままだ。面白いとは思わないかい?」
「ふざけるな。そのためにどれだけの人が命を落とすと思ってるんだ!」
ありったけの勇気を絞り出すように真が叫んだ。
ナイはそれを鼻で笑う。真の存在など彼の前ではあまりにも小さく、命は軽い。そんな小さきものが虚勢を張って見せたところで、滑稽なだけ。
だがその滑稽さこそナイが好むものである。故に彼は真の絶望する顔を欲して、言った。腕の中のセドナを見下ろして。
「誰が死のうと関係無いさ。僕らはクトゥルーを復活させる。だがそのためには死の眠りについたヤツを叩き起こさなければいけない。だからこの、竜の涙が必要なのさ」
「え……?」
「なん、だと!?」
「うそ……」
真とワルド、そして澪は我が耳を疑った。
「知らなかったみたいだね。この子はね、竜の涙そのものなのさ。流石の僕もここに来るまで気付かなかったよ。秘宝を隠すためにこんな偽装を施していたとはね」

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