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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 34


洞窟内、入り口付近。
そこには邪心崇拝者のエリザと同じく崇拝者の黒コートの青年・アクセル、そして客分の伯白が深きものどもをつれて侵攻してきていた。が、手痛い反撃に遭っていた。
「うざい!」
見張りの人魚が放つ水弾をエリザは風の防壁で吹き飛ばした。お返しに風刃を放って反撃するも、相手は洞窟の岩陰に隠れてそれをやり過ごす。
そんなやり取りが何度か続いた後、癇癪を起こしたエリザは怒り出した。
「あぁーーっもぃ、戦いにくい! なんでこの洞窟はこうクネクネクネクネ曲がってるわけ!!」
当り散らすように無差別に風刃を放つ。その余波で後方の深きものどもに被害が出た。
「怖ぇ〜エリ姐めっちゃ怖ぇよ」
「これだから風属性は感情の起伏が激しくていけませんネェ」
無差別攻撃を平然と避けたアクセルと伯白がヒソヒソ話す。
それをしっかりと聞いていたエリザは矛先を二人に向けた。
「アンタ達うっさいわよっ!!」
さっきよりも数倍強力な風刃が二人を容赦無くずたずたに切り裂く。
だが二人は致命傷確実なダメージを受けても平然と立ち上がった。
「まったく、慈悲も容赦も無いですネェ」
伯白はバラバラになったまま言った。
「痛くないわけじゃないんだぜ」
アクセルは血まみれだがどこにも傷が見当たらない。
二人とも恐ろしく人間離れしていた。
「五月蠅い煩いうるさい! 文句言うならアンタ達がやりなさいよ!」
「言われなくてもそのつもりさ」
「風属性の貴方には洞窟は分が悪いデスカラ」
伯白の言うことは尤もだった。風属性は広い場所でこそ真価を発揮する。逆に洞窟のような狭い場所では役に立たないのだ。
「んじゃま征くかね客人」
「了解デス」
ハルバートを担いだアクセルに伯白が続く。
エリザは荒い鼻息を出して近くの岩に腰掛けた。
敵は二人。邪心崇拝教団ナンバー4・アクセル、客分・李 伯白。ナンバー2・エリザを残して真達の待つ深部へと侵攻する。

アクセルと伯白、二人が見張りを殺して奥に侵攻をはじめてまもなく真達の方にも情報が来た。
「おれ達が出よう」
「了解だ主」
真とワルドに続いて荒も部屋を出て行く。
「待ちなさいセドナ」
当然のように付いて行こうとするセドナをトリトンが呼び止めた。
「戦うのは彼らの役目だ。お前は残りなさい」
「でも…」
「トリトンさんの言う通りだよ。ここに来た今、もう君が前線で戦うことはないんだ。ここはおれ達に任せて君は里のみんなを守ってくれ」
真は諭すようにそう言ってさっさと行ってしまった。

「良かったのか主?」
洞窟を駆けながらワルドは傍らの主に訊く。セドナを置いてきて本当に良かったのかと。
「いいんだよこれで。前線に出るのはおれ達の役目だろ? それに、この先もっと敵は強くなる。そうなった時、あの子を守りながら戦うのは無理だよ」
守るために危険から遠ざける。それが真の決意だった。
「お喋りはそこまでだ。どうやらこの先が戦場みたいだぞ」
荒が言った。確かに前の方から戦闘音が聞こえる。
3人とも表情を引き締めた。
「大丈夫か!?」
先の方で誰かが倒れていた。真が駆け寄って抱き起こすと先ほど会ったアルバという少年だった。
人魚族の再生力のおかげか目立った傷は無いが、体力が低下しているのか衰弱が激しい。
「み、澪がこの先で……」
「わかった。その子は俺たちが助けるから、ここで休んでてくれ」
アルバを壁に寄り掛からせて再び走る。
澪は20メートルも行かないうちに見つかった。
人魚に完全変化した澪は洞窟内の水を集めて作った水剣でアクセルと斬り結んでいた。
だが洞窟内は一応水属性であるものの足下の水は踝まで浸かる程度。故に動きが鈍い。
その上、相手の男・アクセルの技量が目茶苦茶に高く。かなりの劣勢だった。
「うおらぁ!」
「きゃああぁっ!」
横薙ぎに振るわれたハルバートを受け止めたものの、あまりの威力に澪は吹き飛ばされた。壁に叩き付けられて呻く。
その隙を伯白が狙った。
「『灼血』ッ!」
手のひらを傷つけて血を撒き散らす。散布された血は紅い霧となって澪を包み込んだ。

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