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Beast Master“真”
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Beast Master“真” 33


洞窟の奥には広い空間があった。
そこでは里の者達が大地震の直後みたいに寄宿していた。
セドナをみた彼らは皆一様に喜色を浮かべ、涙を流す者さえいた。
「大人気だなぁ」
「長の娘で器量がいいんだ。ちょっとしたアイドルみたいなもんなんだろうよ」
「逆玉の輿だな主」
「そうだな。大事にしてやれよ」
「な、なんだよお前ら!」
ここぞとばかりに少年をからかう男とオス。「幸せ者だなオイ」
「我が将来も安泰だ」
若輩者の真は抗う術無くいいように遊ばれた。
「娘はやらんぞ」
不意に中年男の声が割り込む。
いつの間にか背の高い男が真の目の前にいた。
「貴方は?」
「セドナの父だ」
少しだけ時間が止まる
「お義父さんですか!?」
「君に『お義父さん』と呼ばれる筋合いはない!!」
お決まりのコントである
「・・・ゴホン、少年。セドナを守ってくれた事、礼を言う」
「いえ、困った時はお互い様ですから」
「いや、最近はそういった考えをもつ人間は少ないからな。まぁ・・・立派なものだ」
親心からか少し真に対しての点数を低くしつつ褒める
「んもぅ、お父様は男の人に対して厳しいんだから」
「おぉ、セドナ。心配したんだぞ」
「はい、お父様」
親子の感動の対面である
「お父様、こちらが真さん、荒さん、ワルドさんです」
セドナが順に紹介した。長が頷いて口を開く。
「私がこの里の長のトリトンだ。みなさんよろしく」

自己紹介を済ませた真達はさらに奥にあった部屋に通された。どうやら長の専用スペースらしい。
「さて、なにから話しましょうか…」
「単刀直入に聞く。人魚の里の秘宝とは一体何なのだ?」
ワルドが牙を剥き出しにした怖い顔で聞いた。
トリトンは溜め息を吐き、少し逡巡したあと答えた。
「竜の涙、と呼ばれる海の魔力の塊です」
「やはりそういった物か…」
ワルドは憎々しげに顔を歪める。真でも初めて見た表情だった。
「ワルド?」
「主よ、彼奴らの目的がハッキリした」
「ほぅ、その心は?」
「おそらく旧支配者・クトゥルーの復活だ」
「なに!」
あまりの驚きに荒は煙草を落とした。
しかし真とセドナはいまいち話が掴めない。
「そのクトゥルーって?」
「太古の時代に宇宙より飛来し、この星を蹂躙した旧支配者と呼ばれる邪神たちの一柱です」
真の問いにはトリトンが代わりに答えた。ワルドは頷く。
「そんなものが復活すればただそれだけでも甚大な被害が出るぞ!」
旧支配者クトゥルーが復活しただけでその邪悪な神気は地球中に広がり、芸術家のような感受性の高い人間はそれだけで発狂する。全世界で大勢の人間が一斉に狂うのだ、被害は計り知れない。
「おまけにあっちには水神クタアトまでありやがる。水妖の使役の秘術が記されたあの魔術書ならクトゥルーを制御できるってわけか」
「そんな! なんとかならないのか!?」
「復活させれば手が付けられん。一番の方法は秘宝を渡さぬ事だ。トリトン、秘宝は今何処に在る?」
ワルドはトリトンを睨んで聞く。皆の視線がトリトンに集まった。
「わかりました話しましょう。実は……」
トリトンが言おうとしたその時、洞窟を轟音が揺らした。

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