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Beast Master“真”
その他リレー小説 - ファンタジー

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Beast Master“真” 27

真の脳裏には日本で氷使いの闘士に殺されかけた時の記憶が嫌にリアルに甦っていた。悪い気分にさせられた落とし前は付けさせてやりたい。
「ワルド、あいつが何処にいるかわかってる?」
「当然だ。我が鼻は魔王でも誤魔化せぬ」
「よし、じゃあ行くか!」
ワルドが走り、真は銀閃と天虹を手にして続いた。
「主」「OK」
指示に従ってやや右にズレる。次の瞬間、元いた場所に氷球が発生した。
「ワルド」「了解」
ワルドが加速する。狙う先には陸と呼ばれた少年がいた。
陸は居場所を気付かれたと悟ると氷球を滅多撃ちしてまた隠れようとした。
だが森は本来狼の独壇場だ。
ワルドは右に左に自在に動いて氷球を避けながら執拗に陸を追い立てる。
そうして鬼ごっこをするうちに陸の前に詠唱中の真が現れた。
「くらえ!」
天虹が緑色に輝く。風の属性弾が放たれ、陸の足下に着弾する。するとそこから風が吹き竜巻となって陸の周囲を吹き荒れた。ただし丁度台風の目にあたる所にいる彼に被害は無い。
「こっちなんともないけどこんなんで何になるん?」
「いや、これでいいんだよ」
第二弾。天虹が文字通り火を噴いた。
火は竜巻に当たって炎の渦になる。もちろん陸には当たってない。
脱出できないが被害の無い陸はこのまま効果が尽きるまで待つ事にした。
だが数分後、それが間違いであり真の狙いだったと思い知らされた。
「あ…?」
突然意味も無くわけもわからず膝が落ちる。頭がクラクラした。息が妙に苦しい。
「がっ…はぁ…やば」
炎の渦は相手を焼き殺すための魔術ではなく。無力化するものだった。陸のいる渦の中心は空気循環せず、炎のせいで時間が経つほど酸素濃度が減っていくのだ。
「これなら氷でガードできないだろ? 変身してない状態の力じゃ抜けられないだろうしな」
炎の渦の火勢は強い。これを破れるのは規模のデカい魔術か闘士の肉体強化くらいだろう。
「くぅ…っ」
陸はなすすべなく倒れ、気を失った。

しばらく様子を見る真とワルド
ピクリとも動かない陸
「やったみたい・・・だな」
銀閃片手に倒れた陸に近付く真
「さて、どうしよう」
と、呟いたその時だった
「・・・りく〜?」
今の戦闘で目を覚ましてしまったのか少女が眠い目を擦りながら上半身を起こした
「りく?」
少女の目に写ったのは倒れた陸に拳銃を持った真と戦闘モードのワルド
「あ・・・あぁ・・・」
少女の表情が氷つく
「お前達がりくを・・・」
ドンッという音がしそうなほどの魔力の渦が少女から放たれる
「よくも・・・」
ゆっくりと少女マリオンが立ち上がる
「よくもりくを!!」
通常では有り得ない程の放出料の魔力、普通の魔術師ならば数分で魔力が枯渇する程の料である
「おいおい、ワルド・・・」
「まさか・・・あのこども、いや『アレ』はホムンクルスだ主!!」
ホムンクルスとは錬金術により産み出される擬似生命体のことで通常、対魔術師用に使い捨ての兵隊として用いられる
魔術構築など複雑かつ高度なことはできないが、そのかわり魔力を直接身に纏うことにより筋力、防御力、スピードはは中級から上級の闘士クラスにまでになる
「この放出料・・・マズイぞ主、もしかすると我等は目覚めさせてはならんものを目覚めさせてしまったかもしれん」

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